【WT】New world【短編集】

君に全てを。8 ページ26

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『っ栞先輩！』


訳がわからなくなって栞先輩に解析を頼んだ

どうやらこいつはさっきの男が私の記憶を覗いて創り出したものらしい

しかもニセ迅さんもトリオン体だ

姿や声はもちろん、強さまで迅さんのままみたいだ。私の記憶から引っ張りだしてきたならそうなるだろうけど。



「さぁ、始めるか」



その言葉は、いつも訓練開始の合図だった

ーー懐かしい。
偽物だと分かっていてもそう感じる。



『……やるしかない』



青く光るそれを強く握りしめて
自分に言い聞かせるようにそう呟いた




＿＿＿＿戦闘が始まった。









あれからどれくらい経っただろうか
20分？そんなにかかってない気もするし、もっと経っている気もする。


ニセ迅さんのスコーピオンが私をめがけて振り下ろされる。それを上手く捌いて反撃へ繋げる。


ずっとその繰り返しだった




「動きが見え見えだぞ！」


うるさいなぁもう！


「俺のSE忘れたのか？」


覚えてるって…!!


「…なぁ、A」









「……今年も咲いたんだな、桜」









ーーその時、私は思った
この人は本当に偽物なんだろうか



動きも、その声も、青い目も、だってほら、今だって、







『なんで泣いてるの……？』







もう一度手にある剣を見つめる。
なんだかさっきよりも存在を主張しているように見えた




ーー迅さん。迅さんはもういないよね？




「……A、ずっと言いたいことがあったんだ」


迅さんはこの剣だ


「あの日…、俺のために、泣いてくれて…っありがとう…っ」


そう、もういない、どこにも


「Aは、俺のッ…自慢の、弟子だ…」






ーーあぁ、偽物でもいい






『迅さん、私も、迅さんと、生きたかった』





偽物だとしても、伝えたかった




溢れる涙に気付かないフリをした




今すぐ抱きしめたかった




刀を振り上げる手が震えていた
そしてその手で、優しく微笑んでいる迅さんを、切り裂いた





「＿＿＿＿＿、＿＿＿＿＿。」

『…っ、はい…!!』





＿＿＿剣に迷いがある、悪い癖だ






涙で滲む中、消えゆく迅さんに精いっぱいの笑顔を向ける






『また一緒に、桜見ようね』



「…っ、

＿＿＿＿そうだな、いつにしよっか」









迅さんの笑った顔を見たのは、それが最後だった


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