他校の好きな人が排球部のマネになるまで【西谷夕】

◇４５ 親友の幸せを ページ47

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普通ならここで嫉妬を覚えるのかもしれない。だけど俺は、ひたすらに感謝の気持ちを抱えていた。




「西谷さん」



数メートル先にいるその先輩に、聞こえていないだろうと分かった上で話しかける。



「.........ありがとうございます」


卒業してから約二ヶ月。いつ先輩とAが出逢ったかは知りませんけど、それでも俺より圧倒的に短い期間。

俺が出来なかったことを、成し遂げてくれて、大事な親友を救ってくれて、本当にありがとうございます。



ちらと此方を見た西谷さんの顔は、少し笑っているように見えた。




俺も少し笑って、正面に向き直る。未だに親友にくっついたままの日向に声を掛けた。


「おい日向邪魔だボゲェ、Aから離れろ」



一瞬だけ俺を睨んでから、怯えたように離れていく日向の背中を見ながら目を細める。
分かりやすいやつ。考えてみれば国見も同じだったような気もした。及川さんは......引き際がよく分かっていたようだから、多分違う。その未来もきっとあっただろうけど。



「いくらお前が幼馴染みで一番近くても、俺の大切な親友に合うのはお前じゃねえ」



「知らなかったといえど知ろうとしなかった、救えなかったお前に、お前らに、資格はねぇ」と小さな声で誰にも聞こえないように呟いた。





「A、もう一本」
『ん』



願わくば、これから先Aの笑顔が西谷さんの元で明るくなっていきますように。




「あの王様が、ねぇ......」



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