他校の好きな人が排球部のマネになるまで【西谷夕】

◇３０ 今すべきこと ページ32

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私は黙って話を聞く。

「でね、その子、勉強が全く出来なかったらしいの。それなら何で高校に入れたのかって話だけどスポーツ推薦だったみたいでね。それで勉強が出来ないのにやろうともしなくて、でもその子の人生だからって二人共何も言わなかったって」


気付けば父は涙を引っ込めていた。

「それで夫が産まれる前、同窓会があって久しぶりにその子と会ったら随分やつれていたらしくて。言ってしまえば底辺の人間になっていたみたいなの。それで二人は自分の家族にそんな思いをさせてたまるかって教育熱心になったのよ。白鳥沢に行って貰えば一生ある程度楽に過ごせる筈だから、貴女をそこへ行かせようともした」




だからなんだというんだろう。許せと？私は絶望を知ろうとまでするほど嫌な思いをした。そんなすぐに笑ってはい良いですよなんて言えるわけがない。



「だから貴女も、ちゃんと面と向かって言いなさい。したいことがあるなら。また沢山勉強したくないのなら。分かった？」



はっとした。祖父母がただの血も涙も無い人達ではないのなら、きちんと自分の思いを伝えれば分かって貰えるかもしれない。母はそれが言いたかったんだろう。



私は何がしたい？自由に生きたい。なら何を示せばいい？私は白鳥沢に行かなくたって楽しく過ごせること。楽しければ何も苦痛にはならないこと。


私が楽しいと思えることは？




大好きな人達と、感覚を共有すること。翔も、夕も、国見達も、バレーの話をすると目が輝いて嬉しそうにする。だったら私は何をすればいい？




『部活......！！』




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