◆2 借り物で繋がる ページ4
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目の前のその子は少し困ったような顔をしてから、片手で鞄の中にある何かを探している。
次の瞬間、それは差し出された。
「たお、る...?」
思わず目を丸くして驚く。彼女がまた口を開いた。
『良かったら使って下さい。流石にそのままでは風邪引きますよ』
次に折り畳み傘も半ば押し付けるようにして持たされ、ぽかんと間抜けな顔をしているであろうことが自分でも分かる。
わざわざ初対面の人に、タオルと折り畳み傘なんて渡してくれるのか。返せる確証だってないのに。
彼女の服装を見れば、どこかで見掛けたような制服だった。どこで見たのか思い出せず断念。
まあその前にお礼言わなくちゃな。
「さんきゅ!」
辺りは分厚い雲のせいで矢鱈と暗い。俺は、その暗さには似合わないけれど目一杯の笑顔を彼女に向けた。
軽い、軽すぎるお礼。でもきっと、彼女にはこの方が良いんじゃないかと思った。
『...ううん、気にしないで』
ほらやっぱり。敬語の時よりも、表情が柔らかくなった。少し嬉しい気持ちになりながら彼女に言葉を投げ掛ける。
「いつか絶対、返すからな!待ってろよ!」
『うん』
タオルを頭に被せて、貸してもらった傘を掲げた。
次また逢ってやると思ってもどこか後ろ髪引かれて一度振り返り、彼女を見る。まだ俺を見送ってくれていたみたいで、目が合った。どちらからともなく手を振る。そしてまた俺は背を向けて歩き出した。
借り物で繋がった、また会う約束。
思えば俺は、彼女に逢うためにあの時立ち止まったんじゃないかなんて柄にも無いことを考えた。
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猫狗 - 僕はこちらの作品好きですよ?ただ更新しただけで通報するのであれば、それこそ違反なので、通報させていただきますね!こちらの作品、僕は応援させていただきますね! (2022年12月29日 1時) (レス) @page4 id: a2b9d0ac16 (このIDを非表示/違反報告)
USA(プロフ) - 自評 乙さん» お話を更新しただけで何もしてないんですけど......殆ど低評価なのでそんなことする価値もありませんし。そもそも違反にならないことで通報されるのも可笑しくないですか...?? (2022年8月4日 18時) (レス) id: e573a41bd7 (このIDを非表示/違反報告)
自評 乙 - そこまでして 架空の評価ほしいものです? むなしくないです? (2022年8月4日 17時) (レス) @page1 id: 30f3f25f8c (このIDを非表示/違反報告)
自評 乙 - 通報させていただきます。 (2022年7月23日 21時) (レス) id: 0ecdb79203 (このIDを非表示/違反報告)
USA(プロフ) - くろさん» そう言っていただけて嬉しいです...!!結構設定詰め込んじゃってるんですけど今後もお付き合い頂けるとありがたいです!! (2022年5月15日 22時) (レス) @page21 id: e573a41bd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:USA | 作成日時:2022年5月5日 15時