他校の好きな人が排球部のマネになるまで【西谷夕】

◇１６ 丘で二人、 ページ18

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Aside




なんで、どうして。それだけがずっと頭を支配していた。


もし逢おうと彼が思ってくれていたら申し訳ないけれど、一人になりたかったからこの丘に来たのに。



「見つけたぞ！」



今まで沢山の人の不安を弾き飛ばしてきたんだなと思うような笑顔と、言葉だった。声だけで、ああ彼だと分かった。

でも深く絶望していた私は混乱と一人にさせてほしいのにという身勝手な考えで、ゆっくり振り向いて『どうして』と短く言うことしか出来なかった。



「絶対逢うって、言ったもんな」と言った彼に胸が締め付けられた気がする。呆然と見つめていると、何やら鞄を開きだす。


彼が差し出した折り畳み傘は間違い無く私が一昨日彼に貸したもので、律儀だなと回らない頭で考えた。




タオルはまだ乾いていないことを知ってまた逢えるんだと思ってしまったことに羞恥心を抱く。それを誤魔化すように出た言葉は、自分でも酷いと思った。

雨で分からなかった筈の涙も、声が途切れ途切れな上嗚咽が混ざってしまっているから分かってしまう。



言ってしまったものは仕方ないのだけど、何処か気まずくて傘を受け取るのを躊躇していたら彼がおもむろに傘を開いて、私の隣に座った。傘にぽつ、ぽつり、と時折雫が当たる音がする。


煩い心臓をそのままに、言葉を待った。




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