・ ページ50
2/2
「大ちゃん」
「え？」
「ううん」
小さく出てしまった言葉は、ギリギリ聞き取られずに済んだみたいだ。
自分が思うかわいいを詰め込んだメイクを施したAちゃんを見て辛くなるなんて。
Aちゃんの長さのあるまつ毛が好き。
Aちゃんの短くて丸い爪が好き。
Aちゃんだけが使う"りゅうせ"ってちぢめた呼び方が好き。
Aちゃんが笑うときに口が大きく開いちゃうところが好き。
Aちゃんが、好き。
それら全部を飲み込んで、最後に赤みの強いリップを唇にのせた。
「完成〜！」
「きゃー！さすがりゅうせ！上手い〜！目きゅるんってして見える！あざとかわいい！」
「自分で言うやつー」
「あははっ、ほんまにありがとう！」
Aちゃんが立ち上がった。
「かわいい？」
「何その質問」
「いやほら、自信つけときたいやん」
だぼっとした白ニットも、淡い色みのワイドデニムも、オレンジのコンバースも、ゆるく巻かれたショートボブも、赤いリップの際立ったメイクも、よく似合っている。
何より、恥ずかしそうだけど嬉しそうなその表情が、
「めっちゃかわいい」
自信を待っていってらっしゃい。
笑顔のうちに送り出されて欲しいのに、Aちゃんはなかなか出ていこうとしない。
不思議に思っていると、Aちゃんが俺の目を見つめていることに気付いた。
「りゅうせ、大好き」
「え？」
「もう知ってたかもしれへんけど、ずっと好きでした」
「うそ……ほんまに？！」
「嘘でこんなん言わへんよ！」
「ふつう告白する相手にメイクさせる？」
「やって好きな人が一番かわいいと思う見た目で告白したいやん！」
そう言ってAちゃんは赤くなった頬に手を当てた。
何それ、かわいすぎるんやけど。
「ちょっとやり直し」
「え？何？」
ティントじゃなくてよかった。
ティッシュで赤のリップをオフして、オレンジのリップを塗り直す。
「ん、こっちの方が好き」
「すっ…！」
「メイクだけちゃうで」
「え？」
「俺もAちゃんのことずっと好きやった」
すぐに赤色に染まってしまう君だけど、これからは俺の色に染まってね。
なんて恥ずかしくて言えないから。
かわりにオレンジ色の唇にキスをした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 448人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒雷憂無(プロフ) - コメント失礼します。神様のねがいごとの長編見てみたいです！ (3月10日 1時) (
レス) id: 3082381280 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - シキさん» シキさん、コメントありがとうございます！うわ〜嬉しい！ぜひ長編をお待ちくださいませ！ (2022年12月7日 22時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - コメント失礼します！神様のねがいごと、めちゃくちゃ続き気になります！よければ長編楽しみにしてます♡ (2022年12月7日 3時) (レス) @page39 id: fa47139e50 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - yuksaさん» yuksaさん、コメントありがとうございます！読みたいと言ってもらえると書きたくなりますね(笑)嬉しいです。続きアップできるようにがんばります。 (2022年12月3日 0時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
yuksa(プロフ) - はじめまして。神様のねがいごとの続き、すごい読みたいです。面白かった！ (2022年12月3日 0時) (レス) id: 1137319ed0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：三十谷みそ | 作成日時：2022年4月6日 23時
