＊Beauty and Chess〜結城哲也の場合〜 ページ6
今日も御幸に相手をしてもらう。
正直、御幸には悪いがこれは、大舞台の前のいわゆる前哨戦というやつだ。
「哲さん、いくら考えたって無理ですって」
「むぅ･･･」
将棋の盤をいくら鋭く睨みつけてもいい道が開けるわけがない。
前哨戦どころか、未だに一勝出来ないとはどういうことか。
「ホント、どうしようもなく下手だよね」
「お前･･･なんで野球はあんなに出来るのに･･･」
後ろから、純と亮介にため息まじりに呆れられた。
俺が弱いのではなく、御幸が強いだけだと思うのだが、それは違うのだろうか。
「そういや哲、あいつともやってたよな･･･最近の戦勝は？」
純の言ったあいつ------沢村Aは俺たちの同級生だ。
彼女は、女子ながら将棋も出来るため、以前はよく対局相手をしてもらっていた。
ちなみに１回も勝ったことはない。
「････いや、最近は対局していないが」
「Aも忙しいしね」
青道野球部打撃コーチを努め、マネジャー業務に携わる彼女。
かつ、部員たちにも慕われていることもあり、彼女を頼る人間も多い。
常に彼女の周りには人がいるため、なかなか自分の為に時間を割いてもらうことなど申し訳ない。
だが、彼女との対局は特別だった。
「俺はやったことないですけどA先輩、将棋強そうですよね」
「かなり強いぞ」
「･･････いや、哲さん基準だと、判断しかねますね」
その言葉に周りが笑う。
御幸は一度対局してもらおうかな、などと言っている。
その言葉を遮るかのごとく、俺は言った。
「･･･来週、対局を申し込んだ」
「ほー」
純が呑気な声をあげる。特に興味はないらしい。
「負けられない戦いだ」
「･･･････････どうしたの哲、なんかそれ重いよ」
亮介が半笑いの笑みを浮かべる。
「だから、こうして御幸を相手に練習をだな」
「これ、練習だったんですか？」
練習にもならないような････と御幸が何かブツブツ言っている。
そのまま言葉を俺は続けた。
「勝ったら、あいつに言いたいことがある」
一瞬、室内の空気が止まり、今度は一斉にざわついた。
「ちょっ！まてまてまてまて！！！！お前今、なんつった！？」
「哲さん！？」
「･････････哲、ぬけがけ？」
三者三様の形相でこちらに詰め寄る。
純と御幸は焦っている･･････亮介、背後に黒いものが見えるがそれはなんだ？
とりあえず、３人の慌てようは気にせず、また将棋盤に向かい合う。
(必ず、彼女に勝つために)
＊Beauty and Sympathy〜伊佐敷純の場合〜→←＊Beauty and audacity〜御幸一也の場合〜
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています！更新停止状態のままですが更新はされるのでしょうか？ (2020年9月14日 21時) (
レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
六歩(プロフ) - 空さん» ご指摘ありがとうございます！訂正させていただきました(^-^) (2018年7月22日 0時) (レス) id: b12c942fda (このIDを非表示/違反報告)
空 - 益子じゃなくて増子ですよ〜＾＾ (2018年7月13日 22時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
六歩(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメントありがとうございます。更新頑張ります。 (2018年6月20日 9時) (レス) id: b12c942fda (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています！もう更新されないのでしょうか？ (2018年5月25日 3時) (レス) id: 4e8990689c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：六歩 | 作成日時：2016年5月7日 16時
