【忍たま】事務員兼何でもお助けピンチヒッター係って何だよ？！その14(夏編)

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そのまま彼女を姫抱きし、自分の腕の中で苦しそうに眉間に皺を寄せている彼女を見て胸が苦しくなる。外で待たせている部下達に洞窟に入って来るように促す。
彼女を見るなり部下達は驚いた表情をしていた。

諸泉『ど、どうして彼女がこんな所に…』

高坂『気を…失っているんですか？』

「相当気を張っていたみたいだからね。悪いんだけど、ちょっと彼女を任せるよ」

そう言って陣内に彼女を1度預け、自らの上着を脱ぎ彼女の体を包んだ。少し濡れているけど、無いよりはマシだろう。

諸泉『…』

すると尊奈門が何かを言いたげに此方を見てくる。考えていることが何となく分かるので「大丈夫」だと口を開いた。

「良いんだよ。この子が風邪を引く方が私は嫌だから」

そして再び彼女を自分の腕の中へ招き入れた。先程までの苦悶の表情から少し穏やかになった彼女にホッとしているのも束の間、やけに頬が赤く染まっていることに気付いた。
肩が上下に揺れていることから、呼吸が荒くなっていると推測できる。
熱が出てきたのか…既に風邪を引いていたらしい。もう少し早く彼女を発見出来れば良かったと悔やまれる。

『…………と』

気の所為だろうか、彼女の小さな口が微かに動いたように見えた。
自分の耳を彼女の口元に近付けてみる。

『あ…りが、と…』

その言葉に思わず首を傾げる。
この状況で普通に考えると助けてくれたことに対しての"ありがとう"だろうが、なんとなくそうではないと感じた。

何の"ありがとう"なのか分からないが、少しだけ、彼女を抱き締める力を強めた。

「…さぁ、帰ろう」

山本『忍術学園へ送り届けますか？』

陣内の問い掛けに一瞬迷った。
このままタソガレドキに連れて帰りたい。
だが、そんな事をしたら彼女も忍術学園の子達も困惑するに違いないだろう。
出来ればそうだなぁ…殿の命令で忍術学園を潰せと言われない限りこの関係を続けていきたいし。

「そうだね。そっちの方が近いし」

気付けば雨も止み始めていた。
そしてそれと同時に、遠くで彼女の名を呼ぶ声がする。

「…お迎えが来たみたいだね」

私の腕の中で小さな寝息を立てている彼女の温もりをもう少し感じていたいところだが、敵対関係のある城に仕える忍としてそこは自重しておこう。




年甲斐もないおじさんが、他のものを犠牲にしてでも君のことが欲しいと言ったら…君はどういう顔をするんだろうね。



雑渡 side end

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