忘れたくないあの人とtn ページ46
前世とか、運命とか、そういうキャラじゃないんだよ。
それは、仕事が終わって電車に揺られ、やっと帰宅と喜んでいた時。電車の座席が一つ空いたから、ラッキーと思ってそこに座ろうと移動する。
ふと、その間座席の左右の人を見た。
片方は若い女の子。スマホを片手に寝てしまっている。もう片方は…
と、視線を移した瞬間。
バチバチ、と身体中に電気が流れたように衝撃を受けた。
だって、そこにいた彼は、私の、
前世とか、運命とか、そういうのは信じていない。でも、これはたしかに。
私の前世の記憶であった。
記憶と言っても一から十まで思い出したわけではない。そこにいる彼と恋人で、一度彼と一夜を過ごした時の記憶。…それが心底幸せだったという感情だけ。
「っ、」
あぁ、彼の名前を呼びたい。
昔のように、前世のように。
しかし今は電車の中で、なにより他人である。相手が覚えていなかったら？覚えていたとしても、ここではまずいだろう。
開いた口をふさぐことができず、わなわなと震わせるだけ。
空いた席の前で立ち止まっている私に不信感を覚えたのか、彼が顔を上げた。
彼を見つめていた私と、目が合う。
「…！」
目を見開いた彼は、私と同じような反応をした。
やはり、彼も覚えていたか。
コロコロと表情を変えて、慌ててる。おかしいな、初対面なのに。そんな姿がこんなにも愛おしい。
「次は〜…、」
そうこうしているうちに、電車は次の駅に着いた。なんと、一駅も空席の前に立っていたのか…異様すぎる。
そろそろ流石に座ろうかと思ったら、彼に手を引かれた。
「降りよう。」
頭に響いたその声は、間違えなく聞いたことがある。
ただ一言なのに、全身から汗がぶわっと溢れた。私は、やはり、彼を知っている。
「覚えて…るやんな。」
「ぅ、トントン。」
改札を抜けてどこかにまっすぐ向かう彼。
質問に答えるつもりで、“知っている”彼の名前を答えた。
「久しぶり。会いたかった。」
彼が立ち止まったのはホテルの前。…いかがわしい方の。
入れというように催促する彼に戸惑う。たしかに前世では恋人同士だったかもしれないけど、初対面の男といきなりホテルはきついって。
「ここならゆっくり…誰にも聞かれずに、話せるやろから。」
躊躇した私に彼が声をかける。
たしかに人に聞かれることはないだろう。
おずおずと、きらびやかな門をくぐった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1143人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
咲羽(プロフ) - もさん» 返信ありがとうございます...！もちろんです！更新を心待ちにしております！ (2019年10月6日 22時) (
レス) id: 214ee436ce (このIDを非表示/違反報告)
も(プロフ) - 咲羽さん» 続きですか！書いてみます！お時間かかるかもしれませんが…よろしいでしょうか？ (2019年10月6日 21時) (レス) id: 3f1b25bec4 (このIDを非表示/違反報告)
咲羽(プロフ) - コメント失礼致します。リクエストで、戻れない(都道府県パロ)の続きを書いて頂きたいです！ご検討の程よろしくお願いします...！ (2019年10月5日 12時) (レス) id: 214ee436ce (このIDを非表示/違反報告)
も(プロフ) - kokoroさん» 続きは書くつもりでした！まだ詳しく考えてはいないのですぐには無理ですが、いずれ書きます！ (2019年9月22日 19時) (レス) id: 3f1b25bec4 (このIDを非表示/違反報告)
kokoro(プロフ) - コメント失礼します！！指示の続き的な感じになっちゃうのですが、最後らへんに次はzさんが…とあったので、シュチュエーションなどはお任せしますので、かけたらおねがいします！ (2019年9月22日 7時) (レス) id: df26c53ff8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：も | 作成日時：2019年9月4日 3時
