みゅう。２ 【MIU 404】

MIU : 057 ページ8

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午前2時半。


気付けば通話を始めて1時間近く経った。

さっきまであくびをしてたはずの伊吹さんからは、もう眠たそうな声は聞こえない。


この人このままだと本当に寝ないで仕事に行きそう。


そんな彼とは裏腹に少しずつ私に忍び寄る睡魔の影。

さっきからあくびをする回数が格段に増えた。それを悟られないように何度我慢したことか。


伊吹さんにはお見通しらしいけど。



伊吹「あ、今あくびしたでしょ？」

『してまふぇ…ん…』

伊吹「なにそれ可愛い」

『してないですってば』

伊吹「嘘バレバレ。もう寝よっか？」

『寝ませんー』



何度このやり取りをしただろう。


私も素直に頷けばいいのに、頑なに「眠くないです」と言い続けて早数十分。


まだ伊吹さんの声を聞いていたい

まだ私の質問に答えてない


たったそれだけの理由で、私は眠い目を何度も何度も擦った。


けど、何かと理由を付けてはぐらかしてくる伊吹さんはなんなの。


さっきなんて「花井ちゃんが俺の事“ 藍さん ”って呼んでくれたらいーよ」とか言ってきた。

もちろん「それはせこい！」と一蹴したけど。



『伊吹さん早く理由教えてくださいよぉ…』

伊吹「ん、はいはい。分かったからそれはまた今度にしない？ほら花井ちゃん、ちょー眠そうだし」

『そんなのずるいぃ…』



いつの間にか私はベッドに体を沈ませた。

枕と耳の間にスマホを挟むと、伊吹さんの声がより一層近くに聞こえた気がした。


その低い声で名前を呼ばれる度に頬を緩める私がいる。耳に心地よくなってゆるゆると瞼が下りてくる。


いよいよ睡魔との戦いに負けそうな予感。



『……伊吹、さん』

伊吹「ん？なにー？」

『名前……呼んだら、教えてくれる…？』

伊吹「え。そんなに知りたいの？まぁ呼んでくれたら教えるけどどうする？」

『……』

伊吹「ちょ、もしもし？花井ちゃん？」



伊吹さんの声が脳内でハウリングを起こすように、ぼわんぼわんと反響した。

なにか返事をしなければ。

頭の片隅ではそう思っても最早体は言う事を聞いてくれない。


どうやら私はこの戦いに負けた。

残念ながら意識はここでブツッと途絶えた。



……だから。



『……藍さん……すき』

伊吹「……なっ…」



そんな寝言を口走ってたなんて

この時の私は知る由もなかった。



伊吹「あーもーそれはずるいって花井ちゃん！可愛すぎて藍さん寝れないんですけどぉぉ。ほんともぉぉ…好きー…」


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