狐少女は知っている (ページ12)

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男の子の友情ページ12

彩side

そのとき､授業開始のチャイムが鳴りはじめたのだった。

４人は､あわてて自分の秀明バッグをつかむと､片方の肩の上にほうり投げるようにのせた｡

上杉「黒木､若武の持ってけよ｡｣

上杉くんが投げた黒の秀明バッグを､黒木くんは片手でつかみ､風のようにドアから出ていく｡

ほかの３人もそれに続いた｡

私は､あわてていちばん後ろにいた小塚くんをつかまえた｡

立花「ね､若武和臣にあやまる？」

小塚くんは､びっくりしたように私を見た｡

小塚「あやまるって...なんで？」

キョトンとしたその表情は､じれったくなるくらい人がよさそうだった｡

私は少しイライラして言った｡

立花「だって､あんなに怒らせたじゃないの｡｣
　「あやまらないと､これから先､いっしょにやっていくのに困るでしょう！？」

小塚くんは､やっと私の言っている意味がわかったらしくて､おっとりと笑った｡

小塚「ああ､いいんだよ｡」
　「ボクたちみんな､若武が好きだもん｡｣

私は一瞬､胸をつかれた。

目の前の小塚くんの笑顔が､痛いほどまぶしかった。

小塚「好きって気持ちは､感覚で伝わるだろ｡｣
　「だから若武にもわかってるよ｡ただ今は、ちょっと頭にきてるだけだ｡｣
　「人間は本当のことを言われると､カッとするものだからさ｡｣
　「でも冷めちまえば､元通りだよ｡次会うときには､もう誰も前のことなんて言いやしない｡｣
　「ボクたちっていつもそうなんだ｡だから君も心配しなくて大丈夫だよ｡｣

私はそのときなにかとても大事なものが自分の目の前を通っていったような気がした｡

私は、びっくりして口をつぐみ､その日の授業中ずっと､そのことについて考えていた｡

小塚くんの言葉とともに私の目の前に浮びあがったもの｡

その正体をつきとめたくて､私は自分の心を整理しながらあれこれ考えやがてふっと気づいた｡

今までの自分の態度がどんなものだったかということに｡

私は今まで､クラスの子とか秀明の子とかにすごく気を使ってきた

みんなからはみ出さないために｡

みんなとうまくやっていくために｡

私の中では､それがとても大切なこと､それがすべてといってもいいほど大きなことで､それ以外にはちっとも関心を持たなかった｡

でも本当に大事なことは､みんなとうまくやることなんかじゃなくて､みんなを好きになることかもしれないって私はそのとき気づいたのだった｡