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#29 ページ30

そんなことされたら誰だって勘違いしてしまう。
あの堅物教師から家の鍵を渡された、なんて……。

自惚れながらじっと鍵を見つめて歩いていた、その時。

ドンッ、と突然曲がり角から現れち黒い影にぶつかった。


「すみませ……あ」
「む! Aだったか! すまん、よそ見をしていた。怪我はないか?」


ぶつかってしまった人物は煉獄先生だった。
ぶつかった衝撃でよろめいた私を心配して、先生は目線を合わせながら申し訳なさそうにこちらを覗いている。


「いえ、私もよそ見してたので」
「よもや! それはいけないな、お互い気をつけよう!!
それにしても3年生の君がここにいるなんて珍しいな。この先は確か……体育教官室だな。
君も冨岡に用事でもあったのか」


先生は私が歩いてきた廊下の先を鋭い目で見てから、そのまま視線を私に移した。

ギョロりと見開かれた灼熱色の瞳には、何かを怪しむような睨みをきかせていた。

まさに蛇に睨まれた蛙のように肩を硬直させながら、私はぷいっと先生から視線を外す。


「べ、別に? 冨岡先生になんて会ってないけど」
「そうか!……む、何か落としているぞ」


しまった、と思った時にはもう遅い。
先生は私の足元に落ちていた鍵を拾い上げて、これは……と不思議そうに首を傾げていた。


「あ、ありがとうございます! じゃあ急いでるので。さようなら!」


半ば奪い返すような強引さで先生の手から鍵を受け取ると、私は先生の方を振り向かず廊下を走り出した。





慌てたように廊下をかけていくAを見ながら、つい眉間にシワがよる。

「よもやよもやだ」

口癖のようなそれには、少しだけ怒気が含まれていた。








「美味しいですか?」
「あぁ。お前は昔から料理が上手い」


よかった、と呟きながらついつい頬が緩んでしまう。

男の人に手料理を振舞ったことなんてないから、量の加減がきかなくて明らかに作りすぎてしまった。

鮭大根と卵を溶かしたお味噌汁、ほうれん草の和え物にもやしの炒め物。

しかし冨岡先生はどれも美味しいとパクパクと箸を進めてくれている。


____今でも鮭大根好きみたいでよかった。


あの頃と変わらず、鮭大根を前にすると笑顔になる先生のことを少し可愛いな、なんて思いながら私もご飯を食べた。

モグモグと咀嚼をしながら、ぼんやりと食事を見つめる。

少しでもボーっとする時間があれば、帰り際の煉獄先生との出来事を思い出してしまう。
その度に何かに怯えるように肩をふるわせた。

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中川さおり(プロフ) - このシリーズが出来たらまた読みたいです (11月19日 11時) (レス) @page47 id: 70c247066b (このIDを非表示/違反報告)
莉子 - 私も義勇さんが大好き過ぎるので、なかなか読むのが辛かったですが笑、こんな風に前世で繋いだからこその縁がある、というのがまた素敵で、感動しました( ; ; )次回作も首を長くしてお待ちしております!質問コーナー楽しみです!また読み直してみようと思います! (2021年9月23日 11時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
莉子 - 完結おめでとうございます( ; ; )このお話が立ち上がってからのファンですが、本当に物語の世界観と作者様の文章が好きで、更新待ちしている時も何度も読み返してました。更新される度に嬉しくて舞い上がってすぐ読むくらい、大好きでした泣。本当にお疲れ様でした! (2021年9月23日 11時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 完結おめでとう…。いい話だった‥。幸せに終わった、良かった。これでお別れだな。面白かった。これからも頑張ってくれ。冨岡義勇だ。 (2021年9月23日 7時) (レス) @page47 id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - このまま義勇さんと結婚して欲しい!夢主とどうなるか楽しみにしてます。 (2021年7月31日 8時) (レス) id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ももりんご | 作成日時:2021年1月27日 3時

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