拭いきれない悔い ページ26
このまま走り去ってしまえば、確実にこの人は死んでしまうだろう。それが分かっているから、私は動けなかった。
足軽｢た、頼む……っ俺も…俺も連れていって……くれ…、、｣
口角に血が滲んでいる。もう声を出すのがままならない。
私も決断できず、息が上がってしまう。
足軽｢嬢ちゃ…ぐぁぁあぁぁぁっ…！！！！！｣
『きゃぁぁあぁ！！！！』
私も、足軽も絶叫した。
伊｢A仙蔵！！！｣
文｢仙蔵！！何やってんだ！！｣
留｢早く行くぞっ！｣
小｢そのままでいいっ！｣
私は足を足軽に掴まれたまま小平太に支えられ、六人と静かな野原まで連れていかれた。
足軽が絶叫したのは、背後に迫ったもう一人の足軽に、刀で思い切り首を突き刺さられた所為だ。
意識を失っても尚、私の足を手放すことはなかった。
仙｢…A？｣
足軽の手は長次が優しく離してくれた。
あまりにも衝撃的な光景から目を逸らしていた。しかし一度見てしまったもの。深く頭に刻み込まれてしまった。
目を瞑っても鮮明に記憶に残り、私を逃がしてくれない。
『その人……』
伊｢…もう、息は無いよ｣
伊作の言葉に、私は強く押し潰される感覚になった。
さっきまで生きていた人が、助けを求めていた人が、今はもう動かないという事実でとても恐ろしい。
『…ぅ………』
私は涙を抑えられなかった。
『死ん…じゃった……』
横たわる亡骸に背を向けて、悔いを零す。
仙｢何を言っている。お前の所為では『でも』
『あの時あの人を引きずってでもいれば、…』
文｢仕方のないことだ。足軽たちは、そういう天命があることも承知の上で戦ってるんだ｣
きっと仙蔵も言おうとしたことだ。足軽の人生について。
『あの時の声が今も聞こえる気がして…』
ついさっきまで聞こえていた声が、今はあの身体から聞こえない。それなのに頭に響く生々しい声。
伊｢Aはこういうの初めてだよね。僕らはもう何度も目の当たりにしてきたから…｣
そう呟く伊作も慈悲の心で悲しそうに顔を曇らせた。
小｢少なくともお前の所為ではない｣
留｢あの状況じゃ、誰も何もできなかった｣
仙｢私こそ、早くお前を連れていっていれば…｣
『仙蔵の所為じゃ…！』
仙蔵が自責を背負うことを否定しようと振り返った私の頭に手を置いて、長次が私の前に膝を着く。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 51人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「逆ハー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雅 - 映画🎞、、、私も気になりますので、楽しみにして待ってまーす🧝🏻♀️🍀 (2022年6月21日 16時) (
レス) id: a363e94967 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 映画だ！ 楽しみです✨ 文次郎確かにカッコいい！！ まぁ私は箱推しだけどね！！www (2022年6月21日 12時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
ピーナッツ(プロフ) - トミーさん！わぁい🤭本当ですか！😆💕お仲間ですね( -∀-)無理せず楽しく続きを書きますね！👍コメントありがとうございます😊💕 (2022年5月31日 6時) (レス) id: 6a480499af (このIDを非表示/違反報告)
トミー - 初コメです！私も潮江文次郎推しなのでめちゃくちゃ嬉しいです！続きが楽しみです無理せず頑張って下さい！ (2022年5月30日 17時) (レス) @page21 id: 262146dfd0 (このIDを非表示/違反報告)
ピーナッツ(プロフ) - (//∇//) (2022年5月29日 17時) (レス) id: 6a480499af (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふたば | 作成日時：2022年5月10日 6時
