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私たちは沢山の場所を見て回った。

一本一本丁寧に作っている傘のお店や籠屋。町の子供に大人気の飴細工。
少し高いが品質はピカイチの着物屋。それを飾る美しい髪飾り。
この城下町はいつでも賑やかで昔からずっと、花の国の誇りだ。

夢中になって坂田さんの袖を引き、「次はあっちの店に行こう、次はそっちに。」なんて子供みたいにはしゃいでしまった。
そんな私の姿を見て坂田さんは、小馬鹿にするのではなく、笑みを浮かべながらそっとついてきてくれた。
__

「もう夕間暮れや、早いなあ。女の子一人やと危ないで、送ってく。」
気が付けばもう日が落ちかけて、辺りは橙色になっていた。
そこで今まで自分が長い時間連れ回してしまった事実に気が付けば、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

慌てて私は「ごめんなさい」とだけ小さく呟いた。

「何で謝るん!?俺何かしたっけ?」
坂田さんは目を丸くして私をじっと見る。

「沢山連れ回しちゃったなって…」
「そんなん俺が連れ回してー言うたんやもん!袖引っ張ったってくれんと逆に寂しいわ〜!
それに今日、俺めっちゃ楽しかってん。久しぶりにはしゃいでもうた!」
そう言って彼はにかっと笑う。

坂田さんの言葉に安心して、私もつられて笑みを零した。
実際私もこんなにはしゃいだのは久しぶりだ。
城にいる時は羽目を外すような真似はしないし、よく知る人の前で騒ぐなんて恥ずかしい。
逆に今日初めて会った人とのほうがはっちゃけられるのかもしれない。

鳥の国との対談の件で心がざわめく中、こんなにも素晴らしい気分転換はないだろう。
沢山の意味を込めて、私は坂田さんに「ありがとうございます」と告げた。
夕間暮れの生暖かい風が私たちにそっと吹きかけた。

坂田さんは一瞬だけ戸惑い、その頬を髪色と同化させては、握っている手の力を少しだけ強めたのだ。

「ほ、ほんなら送ってくで、家どこなん?」
何故か落ち着きがない坂田さんに問われると私はそれに答えた。

。.*:❁:*. 。

君は歳のわりには幼い顔立ちで、俺とあまり変わりはなさそうなのに小さく見える。
しっかりと化粧をしていて、女性さをちゃんと出してはいるが子供みたいな顔つきの為にそんな事はないのだが白粉をつけるには少しばかり早いような、慣れないような感覚がした。

しかしふいに告げられた感謝の言葉や、俺に見せた笑顔、夕間暮れの生暖かい風になびく髪は、君の女性らしさを俺に教えたのだ。

漆→←伍



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設定タグ:浦島坂田船 , 歌い手   
作品ジャンル:恋愛
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音羽(プロフ) - めっちゃ続き気になる!!!! (2021年11月22日 21時) (レス) @page8 id: 6bfe6097e5 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2020年11月26日 21時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すごい。。。この作品私得←これからも更新頑張ってください!! (2019年7月30日 17時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
- ヤバいぃイィィイ!面白すぎて語彙力がとろけるチーズになりました←これからも更新頑張って下さい!ずっと応援しています!! (2019年7月30日 15時) (レス) id: eb18b63c38 (このIDを非表示/違反報告)
歌波 - さいこう! (2019年7月29日 15時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ne6 | 作成日時:2019年7月23日 3時

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