嵐 ページ33
Aside
…まるで、嵐のようだと思った。
いや、この状況を嵐だと例えると、少し違うかもしれない。嵐が来る前の静けさというように、嵐が来る直前には何らかの予兆があるものだ。これから嵐が来るかもしれないと、そう予測させる何かがあるはずなのだ。けれど、今回は何も、そんな予兆のようなものなど一つもないまま、突然に嵐が私の元に訪れた。私の元を訪れて、私を連れ去り、そして私はここまで運ばれてきた。それからが、嵐だった。
(……いや、)
…嵐なのは出来事ではない。あの女の子、また子のことかもしれない。彼女、来島また子というらしい金髪の髪を持った少女は、まるで嵐のような女の子だった。一方的に彼女は私をここに留めるべく私を説得すると言い出し、自身の自己紹介までし出し、そうかと思えばスタコラサッサとあの後、すぐに部屋を出ていってしまった。嵐のように訪れ、そうして去っていった。私の話を何一つ聞いてはくれないまま。
…一方的な彼女の言葉で終わってしまったのだから、まともな会話すら出来ていないことになる。私は何だかどうしようもない疲労を感じ、はぁ、と一つ溜め息を溢した。結局、私は晋助の意思により、ここに連れ去られ、その上で私を鬼兵隊に再度入隊させようとしているということくらいしか収穫はなかった。大きな収穫なような気もするけれど、あまりに大きすぎて、そして唐突すぎて、「はぁ？」と首をかしげることくらいしか出来そうにもなかった。
…そうして、今現在私は一人なのだけれど。
「…、」
…部屋を見渡してみる。小説が並んでいる小さな本棚、クローゼットにタンス、姿見の鏡や先程たたんだ、ふかふかの高そうな布団。そんな必要最低限のものしかないこの部屋は、20畳くらいの広さで、私一人ではとても広すぎる気がした。一つ一つの家具も恐らく高価なものなのだろう。屯所の私の自室に比べると相当な差があるように見えた。そういえば晋助はお金持ちだったっけか、なんてことをふと思い出す。
けれど、この部屋には生活感の欠片もなくて、なんだか落ち着かない。まるでカタログに乗っているような、お手本のような部屋だった。
…まぁ、暫く生活するには困らない環境ではあるけれど。ご丁寧に、部屋にはお手洗いやらお風呂やらもあるようで、下手したら一日中ここで過ごせてしまえそうだ。窓がないのがただ唯一文句のつけどころだ。たまには窓の外の景色を眺めていたいものである。
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狗 - 長編小説って飽きやすいイメージがありますが、ピピコさんの小説は、全く飽きることがなく、むしろ読むたびに続きが読みたい！と思えます！最後までしっかりと読むつもりです！ (2019年5月26日 10時) (
レス) id: 0b828016c7 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - にんじんさん» にんじんさん！レス遅れてしまいごめんなさい！ありがとうございます！また子ちゃんは多分私の書く小説で出てくるのは初めてだと思われるので上手く書けているか不安でしたがそう言って頂けて安心です…！また子ちゃんだけではなく総督様にもご注目くだされば幸いです！ (2018年2月14日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - また子ちゃんカワイイ！ (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 鏡華さん！ありがとうございます！終わってほしくないと言って頂けて感激してます！書き手としてすごく嬉しいです！ずっと暖めていたお話なので展開をうまく開いていけるか不安ではありますが頑張らせて頂きます！高杉さんにそして土方さんの活躍をお楽しみに！ (2018年2月9日 19時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
鏡華 - 終わってほしくないです！！高杉さんも関わってきて、続きが気になります！！ (2018年2月9日 9時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2018年1月27日 18時
