可能性 土方side ページ31
「…高杉」
…高杉晋助。俺はその名前をポツリと呟いた。今まで何度も口にしたことがある、過激派攘夷志士の中でも最も危険だと言われている男の名前を。そして同時に、Aの幼馴染みの名前を。俺のその声には、何かしらの感情が隠れているように静かに響いた。怒りや焦燥、そんな類いの感情が、薄く、けれど確かに滲んでいるように思える。万事屋は俺達に背中を向けたまま、拳をギュウッと握り締めている。指先が白くなってしまうくらいに。
「…アイツしか、いねェだろ」
…万事屋は今、苦しんでいる。幼馴染みが、幼馴染みの手によって連れ去られたかもしれない可能性があることに、その可能性がとても現実的であることに、苦しんでいる。無理もないように思えた。野郎の位置を、自分に置き換えて考えてみる。それはあまりにも残酷な状況だった。嘗ては共に同じ時間を過ごして、同じ志を携えていた奴等が、傷付き傷つけられているのだから。
…高杉の手によってAは連れ去られた。昨日の夜。静かに、何一つの痕跡を残さずに。確かに、その可能性は有り得る。Aが自分の意思でここから居なくなる理由が見当たらない。それにアイツは、俺と約束をしていたのだ。
『今夜、土方さんのお時間を私に少しだけください』
お話したいことがあります、と。アイツは俺に言ったのだ。そんな言葉を言い残して、そんな望みを口にしてから、居なくなるなんておかしいと俺は思う。違和感しか残らない。アイツがここから消えることを望んでいたのなら。俺の目の前から居なくなることを予定していたのなら。あんな約束なんて、しないはずなのだ。
…何処までも潔いアイツが、そんなことをするとは思えなかった。
けれど。
「でも、鬼兵隊に連れ去られたかどうかなんてまだ分かってないんでしょう？それに、」
もしそうだとして、奴等の居場所なんて分からないじゃないですか、と。眼鏡は万事屋の背中を見据えながらに口にした。そう。鬼兵隊の連中に連れ去られたか可能性は十分に有り得る。けれど、それが確定した訳でもなければ、もしそうだと仮定しても、連中が居る場所なんて検討もつかない。目撃情報なんてものも来ていない。
…最悪の場合、もう既に江戸から、地球から発っている可能性もあるのだ。
……今はもう、Aは地球にすら居ないかもしれない。そんな、果てしない暗闇しか見えないような可能性も、有り得てしまうのだ。
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狗 - 長編小説って飽きやすいイメージがありますが、ピピコさんの小説は、全く飽きることがなく、むしろ読むたびに続きが読みたい！と思えます！最後までしっかりと読むつもりです！ (2019年5月26日 10時) (
レス) id: 0b828016c7 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - にんじんさん» にんじんさん！レス遅れてしまいごめんなさい！ありがとうございます！また子ちゃんは多分私の書く小説で出てくるのは初めてだと思われるので上手く書けているか不安でしたがそう言って頂けて安心です…！また子ちゃんだけではなく総督様にもご注目くだされば幸いです！ (2018年2月14日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - また子ちゃんカワイイ！ (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 鏡華さん！ありがとうございます！終わってほしくないと言って頂けて感激してます！書き手としてすごく嬉しいです！ずっと暖めていたお話なので展開をうまく開いていけるか不安ではありますが頑張らせて頂きます！高杉さんにそして土方さんの活躍をお楽しみに！ (2018年2月9日 19時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
鏡華 - 終わってほしくないです！！高杉さんも関わってきて、続きが気になります！！ (2018年2月9日 9時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2018年1月27日 18時
