100年目 ページ25
「…前に私のこと斬った奴でしょ！！」
…そう言いながら私はサングラスをかけた無口な男に向かって人差し指を思いきり指した。人に指を指してはいけないと何処かで聞いたことがあるような気がするけれど、そんなこと今はどうだっていいし、そもそも人に指を指してはいけないのなら、元から人差し指だなんて名称をつけなければいいのである。人差し指という名前がついているからにはそれを活用しなければならないと私は思う。
そう。私の指の先にいるソイツと私はは、以前私が鬼兵隊の船の甲板に乗り込み、そこで晋助と再会していた時に一度会ったことがあるのだ。私と晋助が会話を紡いでいる間に、ソイツは私の背後に忍び寄り、そして、私の背中を斬りつけたのだ。その瞬間が訪れるまで、私はソイツの存在にまったく気付いていなかった。
…目の前に立っていた10年ぶりの彼に、私自身が注意を怠っていたのか、それともこの男が相当な剣豪なのか。そのどちらの理由も有り得るけれど、元伝説の攘夷志士である紅の舞姫の私が、ああも簡単に斬られてしまったのだ。きっと、そんじゃそこらの連中とは訳が違うのだろう。
「…おやおや、覚えていたでござるか」
…と、サングラスの男はここで初めて口を開いた。なんだかまた変わった口調だった。侍言葉、とでも言っておこうか。その男はふ、と薄く笑いながら「紅の舞姫殿に存じて頂けているとは、光栄でござるな」と、別に対して喜んではいなさそうな、まるで誇らしくはなさそうな、平坦な声でそう言った。
その態度やら何やらが私の怒りの感情を沸々と大きく膨らませていく。つき出した指がフルフルと震えている。あの時、この男に斬りつけられた時の屈辱が甦ってくるように。無理もない。この私があんなにも呆気なくやられてしまったのだ。その上、急所をわざと避けて、気を失うくらいまでにその実力を抑えて、私を斬ったのだ。手加減する気しかない心持ちで、その刀を私に向けたのだ。
…一人の、剣をこの手に握る者として、それは悔しいなんて言葉一つではかたずけられないくらいのものだった。
「覚えてるわよ、忘れる訳がないでしょう」
私は思いきりサングラスのその男を睨みつける。警戒心や敵意、そして闘争心を携えたような目で。それに対して男は、色つきサングラスでどんな目をこちらに寄越しているのか分からない上に、口元は楽しげに歪んでいた。なんて腹立たしいんだろうか。なんで私の元に刀がないのだろうか。
ここで会ったが100年目！！みたいな展開に持っていけないのが何とも無念である。
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狗 - 長編小説って飽きやすいイメージがありますが、ピピコさんの小説は、全く飽きることがなく、むしろ読むたびに続きが読みたい！と思えます！最後までしっかりと読むつもりです！ (2019年5月26日 10時) (
レス) id: 0b828016c7 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - にんじんさん» にんじんさん！レス遅れてしまいごめんなさい！ありがとうございます！また子ちゃんは多分私の書く小説で出てくるのは初めてだと思われるので上手く書けているか不安でしたがそう言って頂けて安心です…！また子ちゃんだけではなく総督様にもご注目くだされば幸いです！ (2018年2月14日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - また子ちゃんカワイイ！ (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 鏡華さん！ありがとうございます！終わってほしくないと言って頂けて感激してます！書き手としてすごく嬉しいです！ずっと暖めていたお話なので展開をうまく開いていけるか不安ではありますが頑張らせて頂きます！高杉さんにそして土方さんの活躍をお楽しみに！ (2018年2月9日 19時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
鏡華 - 終わってほしくないです！！高杉さんも関わってきて、続きが気になります！！ (2018年2月9日 9時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2018年1月27日 18時
