【銀魂】己の行く道 望みの行き場【土方十四郎】

臆病で ページ19

…私の質問。『ここの船員は何人くらいいるのか』という質問にも、状況を説明してほしいと言っても、武市というらしい男は中々口を割ろうとはしてくれない。そりゃそうだ。人数に関してはこの組織の現在の情報で、それが何処かに漏れてしまえば敵側が動く可能性が出てくる。人数がそれなりに少ないのであれば、責められることも考えられるし、人数が多くてもそれは何かしら、彼等なりに意図したことがあるのかもしれない。

彼等がどんな意図を持っていようと、情報は漏洩させない方が、痛い目を見ることになる可能性は低くなる。だから彼等は私に情報を明かさない。例え、今の私に刀がなくて、抵抗する術がなくて、味方なんて一人も居なくとも。


…参謀とは、そう。臆病でいなくてはならないのだと思う。そう考えると、彼はとても出来た人材である。けれど。


「…戦う術も仲間も居ない私のことをそんなに怖がっているくらいなら、もしかしたら今すぐにでも抜け出せるかもね？」


…だからといって、諦める気なんてないのだけれど。口元を歪ませて、肩をぐるぐると回してやれば、固まっていた身体が柔らかくなっていくのを感じる。ここから今すぐに抜け出すのだとしたら、隙をついてこの男の左腰にある綺麗な刀を奪いつつ、開けられたままの襖から出て、出口を探す方向だろうか。船内の構図なんて知らないけれど、それは持ち前の根性と勘だけでどうにかするしかないだろう。

そんなことを思いながら、少しだけ表情を強ばらせている参謀を見返し続ける。どうやら、と。


「…自信がないようだし？」


…彼等は少なからず、私のことを恐れている。

武器も何も持っていない、この場に味方もつけていない、そんな私に最大級の警戒をしているようだ。本来なら敵でもないような私を恐れているからこそ、彼等は私に余計な情報を与えない。少しでも脅威を避けるために。


…だとしたら必ず、私に勝機はある。


「…200人」

「！」


…と。そう声を発したのは、今までずっとだんまりを決め込んでいた晋助だった。クツクツと面白そうに笑いを転がして、そうして続ける。


「今のところ、偵察に言っている奴等を抜きにして200人程だ」


ここにいる連中を入れて、と。彼はそう言った。武市は晋助がそのことを軽々と口にしたことに何かを言いたげだったけれど、すぐに口を閉じた。

晋助がどうしてその情報を私に明け渡してくれたのか。私の挑発にわざと乗ったのかもしれないし、単なる気紛れかもしれない。けれど、ありがたいことに変わりはなかった。

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