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ダイナミック水浴び ページ12




「ふむ、これでそちらからの質問には答えたが、俺からの質問がまだだったな」


空気読めねぇなコイツ。こっちは3年洞窟で寝てた新事実に発狂しかけてんだよ、気付け。
今ものっっっそいタヒにそうなんだけど、心が。


「お前、俺の話を聞く気も、あの方の下に大人しくついてくる気も無いだろう。何が目的だ」


アッバレてら。まぁ、そんな事も今更だ。明らかにおかしい行動だったもの、そりゃあ勘づくでしょーね

何が目的だってそんなものは最初から一つだけ。


『お前の頸を斬る為だ』


右足は前、左足は後ろ。利き手で刀の柄を握る。腰を低く落として下半身に力を溜めろ。呼吸で筋肉一つ一つ、細胞一つ一つに酸素を送れ。


シュルルルルルルルル


壱の型とは少し違う、他の呼吸音が混じったような音。パリリ、パリと音を立てて身体を黄色い光が走る。


『春の呼吸 漆の型 蟲出春の雷(むしいづるはるのかみ)


一瞬にして鬼との距離を詰め頸を斬るこの型の呼吸音はなかなか喧しいものの、放ってしまえばとても静かだ。技の余韻で辺りに浸透する残響の方が煩いと思う程には。

チン、を刀身を鞘に納め、未だ頸を斬られた事が理解出来ていない鬼を振り返る。

呆けた鬼が現実を理解し始めたのはムラタさんとゴトウさんが到着してからだった。


「なんで、…ッなんでなんでなんでなんで!!!!どうして俺の頸が斬られてる!?」


頸だけになって、身体が崩れ始めても喚く鬼。
死にたくない、と言葉は出なくとも崩れ始めた彼の表情が物語っていた。

何がそこまでこの鬼を突き動かすのだろう。鬼になってまで、人を喰らう哀しい生き物になってまで生きたい理由はなんだろう。


『( 考えても、わかりゃしないんだろうけれど )』


白んできた空の光が鬼の崩れるスピードを早くし始めたその時、視界の端に転がっていた鬼の長い爪がこちらに向いた。


咄嗟にムラタさんとゴトウさんを奥に突き飛ばす。
飛んできた斬撃に耐え切ることが出来ずに後ろの茂みを越えるほど後ずさった。

後ろに踏み出した足がスカッと空ぶって嫌な浮遊感に身体が浮いた。


『がっ、がけぇぇぇぇえぇ!!??』


嘘でしょ、鈍臭いにも程がある!足元不注意で崖から落ちるの二度目なんだけど!?

もう手を伸ばしても届かない距離にまで落ちてしまっていて、急いで崖の淵まで来たであろう2人には手が届かなかった。


ザパァン

崖下に流れる川に落ちた音を最後に私の意識は暗転した。

*←これは場面が変わる時に使ったりします(書くことない)→←お風呂は毎日入りたい所存



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作者名:星玉 | 作成日時:2019年8月17日 18時

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