十 ページ11
キュイーンッ
マイクの音割れみたいな、キーンとする音がして跳ね起きる。体はこれまでにないくらい軽く私の願いが届いたんだな、と思う。
その次の瞬間には、ぶわっと空気の波に襲われた。目をつむってゆっくり開く。
「ごめんね。」
テンプレートみたいな謝罪。私よりはるかに色白く傷んだ髪、薄い唇から放たれた言葉。見慣れているような、ないような。
「私、時々子供っぽくなるんだよね。幼いころからのストレスで。」
医者から聞いたことだから、と淡々と続ける。
「だから願ったの。...幸せな``私``に生まれ変わりたいって。」
どこかで間違えた。
私は、いらない子。愛されるのは私じゃない誰か。誰かは妹。
可愛いね、凄いね、頑張ってるね。幸せそうにありがとう、とあの子は今日も言う。
知ってる、人は醜いこと。
あなたの親友は好きな人に近づくため。あなたの取り巻きは金が欲しいだけ。あなたを好く人々は腐ってんの。分かってる?知ってた?ねぇ、心の中なんて見えないんだよ。
笑う。友達。家族。ありがとう。ごめんね。
必要ないから、私には。
大人数に囲まれてても、理不尽な理由で叱られても、何にも感じない。心は動かない。どうでもいい、なんでもいい。
私、いらないって言われる。何でできないのと。ソレに痛いとも思わない。
できるなら、生まれ変わったら幸せな私に、私はなりたい。
お姉ちゃん、って妹が走り寄ってきて
お父さんに勉強を教えてもらって
お母さんはご飯を作ってくれて
「あなたはすごい幸せだね。」
ごめんね、リンクするのに体に変化が出ちゃった。彼女の最後の言葉が消えることなくこの空間に反響した。
「あなたは私。私はあなた。」
交渉成立ね、と彼女は言った。薄い唇がそう動くのを見た後、波が打ち寄せる。先ほどより長いそれに息が苦しくなって白く白くなっていく___
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lkwisterven - 人の幸せは人の不幸の上に成り立っている。だから妹ちゃんは夢主ちゃんの不幸で幸せに生きて居られてるよね。それに感謝されないって悲しいね (2019年8月31日 11時) (レス) id: a124146768 (このIDを非表示/違反報告)
あさひ(プロフ) - 鶴さん» すぐに反応できず申し訳ありません...更新頑張ります!有難うございます! (2019年8月12日 2時) (レス) id: b2cb3ee49e (このIDを非表示/違反報告)
鶴(プロフ) - 初めて見たんですが、とっても面白いです!更新頑張ってください!応援しています! (2019年8月1日 16時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさひ | 作成日時:2019年5月6日 18時