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だから。だから、余計なことをしなければ良かったのに。そう自分を責める声が陽助を苦しめる。しかし、深月の方が辛い思いをした。その思いが彼に懺悔する資格すらないと囁く。
―+✾✿✾+―
渡り廊下の端で、深月は静かに座り込んでいた。もうすぐ始業時間のため、人はほとんどいない。陽気な日射しが直接降り注ぐこの場所で、深月だけが場違いに影を落とす。
――教室に行きたくない。
今まで一度も授業をサボったことのない深月は罪悪感を抱えながらも、体が動かなかった。鉛のように重くて、岩のように固まってしまった体。このまま根が生えて教室に行けなくなればいいのに。なんて、ありもしない現実逃避をする。
「片瀬さん！」
よく通る爽やかな声が彼女の現実逃避を強制終了させた。そんなことを考えている心の余裕がなかった。心臓が跳ね上げ、弾かれたように視線を上げる。
「佐原くん……どうして？」
はあはあと息を切らせて陽助は深月の前に走ってきた。目を見開いて驚く深月に向かって勢いよく頭を下げる。
「さっきはごめん！ 俺が助けようとしたせいで」
「佐原くんは悪くないよ……！ むしろ、お礼を言えなかった私の方こそごめんなさい」
そう言って深月も頭を深々と下げた。
「そんなことない！ 悪いのは俺！ ……片瀬さんを傷つけちゃったし」
「……ううん、全然そんなことないよ。前にここでも手を貸してくれたよね……嬉しかった」
「そうだったの？ 嫌じゃなかった？」
「うん。あのときは逃げるようにいなくなってごめんね」
こんなに長く話したのは初めてだった。彼らにとって、これでさえ長い会話の部類に入る。
もう少し前に、彼女にその勇気があったなら。さらに前に、彼にその勇気があったなら。きっと今頃は二人で笑い合っていたのかもしれない。
二人は会話を切り上げて、教室に戻る。さっきまで重かった深月の体も、陽助と歩けば羽のように軽かった。結局、彼への想いは変わっていない。それどころか、ますます忘れられなくなっていく。
陽助も同じだった。嫌われていない。助けたことを喜んでいた。それは彼にとって一筋の光となる。
――それでも、彼らの想いが届くにはまだまだ勇気が足りない。
二人分の足音は晴れた日の渡り廊下にこだまして消えていった。
続く
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花杜あみり(プロフ) - ライカさん» ありがとうございます！繊細でナチュラル、すごく嬉しいお言葉です！ (2019年3月3日 13時) (
レス) id: bb468dc0cb (このIDを非表示/違反報告)
ライカ(プロフ) - お久しぶりです！繊細、それでいてナチュラルな描写。誰かと思えばやはり花杜あみりさんでした！ (2019年3月3日 12時) (レス) id: 3e72e064c9 (このIDを非表示/違反報告)
花杜あみり(プロフ) - 秦弓月さん» 尊敬だなんて勿体ないお言葉、嬉しいです！ありがとうございます！ (2019年1月10日 22時) (レス) id: bb468dc0cb (このIDを非表示/違反報告)
秦弓月(プロフ) - すごく現実感がありました。描写が綺麗で、尊敬します。 (2019年1月10日 22時) (レス) id: deabd34961 (このIDを非表示/違反報告)
花杜あみり@あっ、スーモ！(プロフ) - Yuki.aruruさん» ありがとうございます嬉しいです！！ (2019年1月6日 23時) (レス) id: bb468dc0cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花杜あみり | 作者ホームページ：
作成日時：2019年1月4日 23時
