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─────の軌跡 ページ19

未来というものは、案外あっさりと変わるらしい。


ある日、ぼくの心は呆気なくぽきんと折れた。
肉体ではなく、此の刃でもなく、心が折れた。
度重なる時間遡行によるやり直し(ループ)
どれだけ刃を振るっても。どれだけ血を流しても。
誰も、誰も。此の本丸(セカイ)の誰一人として。

気付くことさえないのに(・・・・・・・・・・・)

ぼくの争いに。ぼくの抗いに。ぼくの贖いに。
───ぼくの罪に。

だから、もう諦めることにした。
ぼくが一人、戦い続けたって意味なんてない。
ぼくが独り、抗い続けたって意味なんてない。

だから、見て見ぬ振りをした。
本丸が蹂躙されていく様を。
兄弟とも言える仲間達が折られていく様を。
大切な我が君が、殺されていく様を。
気が狂いそうなほど長く、永遠とも呼べるその永い永い間。

抵抗するのも何だか馬鹿らしくて。
唯棒立ちで。或いは椅子へ腰掛け遊戯(ゲーム)の支配人を気取って。

だから其の時も。眼前で、其の背に刃を振り下ろされる乱藤四郎の姿を傍観していた。
しまった、と声を漏らして表情を驚愕に染めていた。

此の後彼がどうなるのかなんて解り切った事だ。
ぼくが止めに入ろうが、入らまいが粉々に折られてお終い。

なのに、どうしてこんなに悔しいんだろう。
無意識に伸ばした手を下ろす。眼を逸らして唇を嚙む。

きっとぼくは錆び付いてしまったんだ。
血濡れて、血汚れて、どろどろのまままた新しい血を被って、拭わないまま鞘に仕舞ったんだ。

抜けない刀に意味なんてない。
斬れない刀に価値なんてない。

だから諦めるしかなかった。
諦めるしか、できなかった。

此れで良いんだ。
もう疲れちゃったよ。


───本当に?


誰かにそう問われた気がした。
こま送りのように、止まっていると錯覚できるほどゆっくり眼前の光景が進む中で、確かにそう問われた気がした。

その問いに、下を向いたまま首を横に振って応える。
良い訳が無い。此れで満足?馬鹿言わせないでよ。

「其の諦めの悪さがお前の取り柄じゃなかったのか?」

挑発的な声が今度は空気を震わせて降ってきた。
反射的に上を見る。ゆっくりと動く、風景の中で、

見慣れない銀の閃光が走った。

降る雪も斬り裂いたかの様に見える白刃。
其れが敵の巨体を斬り捨てた。

右から左に振るわれた太刀。
鎺元の精緻な倶利伽羅龍。
血に濡れていない真白の髪。紺色の羽織。
そして───


此方を見下ろしてくる金色と眼が合った。

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作者名:氷空 | 作成日時:2018年11月3日 21時

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