どうせなら # メロ ページ38
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「メロ、一度も言ってくれないから…わたしが来るのやっぱ嫌なのかな、って…っ」
「なんでそうなる、」
「今日だって連絡しないで来るの、すっごい迷ったんだから…っ」
俺のせいで、目の前のこいつが泣いている。
少し顔を赤く染めながら、俺が理由で泣いている。
それが、たまらなく愛しいと思った。
「嬉しかったよ」
「……え、」
「玄関入ってお前の靴があると、バカみたいに嬉しいんだよ俺は」
知らないだろ。そう言って、涙でぐしゃぐしゃのAを引き寄せる。
腕の中でしがみついて来るこいつは、まるで小さい子どもみたいだ。
なだめるように頭を撫でれば、さらにすり寄ってくる。
あー…、帰したくねえな。
「そんなの、…知らない」
「だろうな。お前の荷物、歯ブラシとコップしかないもんな」
「だって…」
「で、どっちなんだよ?」
「……何が?」
「お前わざと、とぼけてんだろ…」
「ふふ、もういっかい言ってくれたら答える」
「二度も言うかよ」
「じゃあ、帰る……」
そうやっていじけて、するりと腕をほどき、また背中を向ける。
……仕方ねえ、今回は俺が譲ってやるよ。
「A、」
「…なに」
「帰るなよ、
…………毎朝、俺のそばにいろ」
言い終わったあと、すぐに吹き出したこいつを本気で殴ってやろうかと思った。
だが、それは抱きついてきたAの声に一瞬でかき消された。
「………いる。朝も夜も、メロのそばにいる」
「あぁ、一生そうしろ」
「それ、って…」
思わず口がすべったのを見逃さないあたり、女って本当こえーよな。
「とりあえず今日は帰れ、駅まで送る」
「えっ、さっき帰るなって言った!」
「言ってねーよ。早くしろ、終電間に合わないぞ」
「……もう間に合わないもん、メロのせいで」
「そんなわけねえだろ、」
携帯の時計を見る。たしかに、終電まであと10分もない。
死ぬ気で走るか、バイクを飛ばすか。選択肢はまだある。
けど、どうせなら、
「久々に朝まで一緒にいられるね」
「寝かせねーけどな」
どうせ一緒にいるなら、できるだけ長く。
照れて耳まで真っ赤にするその瞬間を、そばで見ていたい。
18.0409.
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Lに抱かれたい - Sっ気Lさんが見たいッッッ (2020年1月2日 20時) (レス) id: 09090d6677 (このIDを非表示/違反報告)
卯月 - ワイミーズ大好きなので見ていて楽しいです!マットの話もしくはマットとメロの話をリクエストしてもよろしいでしょうか? (2019年4月14日 20時) (レス) id: b1a88bf701 (このIDを非表示/違反報告)
I(プロフ) - 優希美青さん» わぁ〜!お久しぶりです!!!待ってくださってうれしいですっ( ; _ ; )/ (2018年7月29日 20時) (レス) id: 020c5bbf85 (このIDを非表示/違反報告)
優希美青 - ほあああw久しぶりです!!待ってましたぁぁぁ (2018年7月27日 10時) (レス) id: 41afb63814 (このIDを非表示/違反報告)
I(プロフ) - 蓮さん» 蓮さん、長らく長らくお待たせいたしました(>_<)1年かけてようやく書き終えることができました……。待っていてくださり本当にありがとうございます…!ご期待に添えたかどうかはわかりませんが、蓮さんが楽しんでいただけますように…! (2018年7月13日 16時) (レス) id: 020c5bbf85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:I | 作成日時:2015年11月16日 5時