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「は？え、ハァ？」
ぽかん、と半目がちな黒瞳をまるく開いて、彼女がこちらを向く。その隙にスプーンを奪い取り、残っていた数口ぶんを片付ける。彼女は硬直したままだったが、段々と頭を抱えるようになってしまった。
「何してくれてんのよぉ…」
「あぁ、スプーンのことか？」
「いや、その他にも色々」
暖かそうな部屋着の袖の隙間から、恨めしそうに黒曜石が覗く。なんなんだよもう、とぐしゃぐしゃ黒髪を掻き乱してから、彼女はこう物申した。
「顔近いんだよぉ、まぁスプーンも使うしさぁ、うん…心臓に悪い！」
「…おう」
「いやもうちょい何か無いの？」
「んー…何も…」
「ハァーー？歯切れわっる…」
眉根を寄せ、少し見上げるようにして俺を睨む姿。先程ぶつけられた正直な言葉。
──どくり、と心臓が大きく脈打った。
「ったくもぉ…恥ずかしい思いした…」
後はやっとく、という彼女の声も聞こえない程、どっどっという自分の心音が低く響いてくる。意外、いや想定外すぎる。
「…クソ、魔性すぎんだろアイツ…」
歯磨きついでに顔をばしゃばしゃと洗い、意図せず溜まった熱を冷ました。
同時刻、キッチンの端でうずくまって、情けない悲鳴をあげるAがいることを、スマイルはまだ知らない。
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作者名：さらさ@ボールペンじゃないよ | 作成日時：2020年12月21日 0時
