【шτ】3月12日のワンルーム【sm】 (ページ3)

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[1]Fleeting love ページ3

「───えっと、スマイルさん？」
「突然来たのは本当に申し訳ないんだが…まぁ、この惨状を見てくれ」
「…Aの、魂が抜けてますね」
「簡単に説明すると、死のうとしてたな」
「あー、なるほど、おいA」
「ごめんゆき、飽きた」
夜10時、成人済女子二人のシェアハウスへ女子の片割れを連れて現れた成人済男性一人。何ともワケありな状況に対しても動じなかったもう一人の方に多大な感謝を送りたい、とスマイルは考えていた。
突然友人が死のうとしていた、なんて知っては衝動的に動くしか無かったのだ。出先からタクシーを拾って、彼女の自宅に事前連絡も無しに突撃。彼女と同棲中の友人─ゆきさんという─に一通り事情を説明して、今。
「Aはさ、飽きたから死のうとしたの？」
「んー、何かねえ、結婚式とか見ててつまんないし、あの人一応私の初恋の相手だし」
「は？初耳…じゃなくてさ、あんたはどうしたら飽きないの？」
「さぁ…わかんね、でもあのスマイルが俺に対してここまでお節介なのは面白かったよ」
「マジ？そんならスマイルに頼めば良くね？一緒に住んで楽しませてよ、って」
「…ハァ？」
「スマイルと過ごすの？悪くないね」
ヘルプミープリーズ。何故俺は異性の友人との同棲を提案されているんだ。大学時代を良き友人として過ごして、この二人が俺ら級にやべえ奴だということは理解していたつもりだったが、ここまでとは想定外だ。そもそも俺がそれほどに面白い人物として認識されているのかが謎であり不服な点でもある。しかしながら脳内で組み立てた言葉の羅列も、全て喉から吐き出す頃には意味を持たない母音に成り果ててしまっていた。
ひどく惹かれていた事に気が付いたからだ。
悪くないね、なんて薄ら笑った彼女に。
「─さん？スマさん？」
「ッあぁ、すまん、ちょっと」
「俺よりスマイルの方が驚いてて片腹痛えわ」
「そりゃ驚くだろ」
「つーか結局、Aと一緒に住むのには反対なの？」
答えはとうに決まっていた。
「あー、…俺ん家狭いけど。ワンルームだし」
「ファ?!ぇ、良いの？僕めっちゃメーワクかけるけど？」
「そんなん今更だろ」
「っひゅう！スマイルさん男前～！」
先程の笑顔から一転、驚愕によって珍しく見開かれた漆黒の瞳に、自分の姿が映る。血色の悪い頬に、僅かばかりか色が乗っていた。ああ恥ずかしい。
二人の同棲生活は、ひょんな事から始まった。
ふっと吹けば消えてしまいそうな程ちいさな恋の灯火と共に。