第8話 ページ8
草木も眠る丑三つ時、雲に隠れていた月が顔を出し、森の中にひっそりと建たずむ建物を照らす。
明かり一つ付いていない屋内へ窓から月の光が差し込む。そして、普通ではそこにあり得ないものを照らし出した。
？「ハア…………………ハア……………………。」
廊下の壁に等間隔に作られた窓から差し込む光は、床に倒れ付した男達を静かに照らす。
ピクリとも動かないもの、呻き声をあげるもの様々だが誰一人として死んでおらず、そして誰一人として動けなかった。
？「ハア………………ハア…………………。」
窓と窓の間、月の光が当たらない壁に寄りかかった男、この奇妙な状況を作り出した張本人もまた動けないでいた。
？「ハア………….…….ハア………………っ…………。」
失敗した、と。声には出さず自分を叱咤する。
セキュリティ対策と明かりを付けさせないために忍び込んで真っ先に電気配線を破壊したが、逆にそれが仇となった。
暗闇の中、目の前の敵に集中するあまり左の死角にいた男が銃を構えていたことに遅れて気付いた。咄嗟に身を捻ったが避けきれず、弾丸は左腕を深く抉っていった。
？「……………っ…………！！」
左腕に猛烈な痛みがはしり、歯を食い縛って耐える。止血はしたが、痛みは収まるどころかどんどん強くなる一方だ。
動けないでいるのは痛みのせいもあるが、もうひとつの理由のせいでもある。日に日に蝕われていく身体はすでにボロボロだった。男の身体は末期の一歩手前の状態であるが本来では立つことさえままならないはずである。
そんな状態にも関わらず、動くことを可能にしているのは男が持つ特別な力があってのことだ。
？「……………………ぐっ！！」
男が突然激しく咳き込む。右手で口を覆うと何か生暖かい物を吐き出した事に気付き、ゆっくりと右手を眼前に持っていく。
闇の中でもはっきりと分かるそれは、血だった。決して鮮やかではないおぞましいほど暗い赤色、もはやそれは黒に近い。
どす黒い自分の血が、巻かれた包帯に染みていく様を見て思わず苦笑する。残された時間は長くはない。以前よりずっと衰えた身体能力とどす黒い血が、それを暗示していた。
？「……………必ず………………見つけてやる………。」
ここでくたばるわけにはいかない。それは自分のプライドが許さない。男は気力を振り絞り、よろめきながら、けどしっかりと立ち上がった………。
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五月雨(プロフ) - 続き気になります！頑張って下さい (2017年2月27日 23時) (
レス) id: 532e1d96ce (このIDを非表示/違反報告)
朧 - 凄い面白いです。続きをまっています。 (2016年2月15日 18時) (携帯から) (レス) id: 7f70fb0fdf (このIDを非表示/違反報告)
☆ - すごい面白いですっ。更新頑張って下さいっ。 (2015年8月13日 11時) (レス) id: 44695f2e16 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 待ってました！！ ＸＡＮＸＵＳが一体誰のことを話していたのかすっごく気になります！！ これからも楽しみにしてます！ (2015年8月8日 14時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
lotus(プロフ) - 待ってました！これからも無理なく頑張ってください！ (2015年8月8日 11時) (レス) id: 2faa68524c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：干支神 | 作成日時：2014年7月13日 13時
