第42話 ページ42
『お花はね、いつかは枯れちゃうのよ。』
言いながら彼、いや彼女は花壇に咲く花を見下ろす。鮮やかなイエローのマリーゴールドがそよ風を受けてふわりと揺れた。サングラスを身に着けているのではっきりとは分からないが、小さくも可憐な花を彼女は口元にどこか寂し気な笑みを浮かべて見ているようだった。
『どんなに丁寧に手入れをしても、ちゃんとお水をあげたりしても、冬が来ればみんな枯れてしまうの。花びらは落ちて葉も萎れて、後に残るのは枯れた茎だけ。』
しゃがんだ彼女は徐にグローブを外す。黒い痣と骨張った指はまるで枯れ木のようで、心なしか震えているようにも見える。それでも彼女は構うことなく咲き誇る花にそっと触れていた。
『でもね、枯れて終わりじゃないのよ。花が土の中に残した種子が冬の厳しい寒さを超えて、春になれば新しい芽を出すの。そうしてまた綺麗な花を咲かせて、次の世代の為にまた種子を残す。次の世代が必ず子孫を残すと信じているから、彼らはこんなにも美しく咲いていられるのかしらね。』
風に揺れるマリーゴールドは陽光を受けて更に鮮やかな輝きを帯びる。その色は彼女の纏う炎の色とよく似ていると思った。誰よりも明るく溌溂とした、力強い色だった。
『だからね、私も信じて最後まで輝いているわ。なんせ私は“晴れ”ですもの。私が曇ったらただでさえむさくるしいのに余計に湿っぽくなっちゃうから。』
勢いよく立ち上がった彼女は言ってその口元に先ほどとは違う笑みを浮かべた。いつものように晴れやかな、挑戦的に笑う様は今から前線に出ていくかのような嬉々とした雰囲気さえあった。
『押しつけがましいかもしれないけれど、あなたには何かを残して欲しいわ。あ、子どもを作れとかそういう意味じゃなくてよ？あなたの好きなように生きて、そして悔いのないようにして欲しいの。その先にある未来の為に、私は最後まで輝くと誓いましょう』
彼女は片膝を着き頭を垂れる。誓いを立てた彼女が顔を上げれば、そこにはまさしく太陽の笑みがあった。
『我儘に、貪欲に、自由に生きて。私はいつまでもその道を照らしているわ。だから迷わず進んで頂戴。あなたの行く末に幸あらんことを』
立ち上がった彼女はそのまま一礼して踵を返す。歩き出したかと思えば、途端足を止めて首だけこちらに振り返る。
『一つだけお願いを聞いてもらえるかしら？私の愛しいコレクションなんだけどー、』
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五月雨(プロフ) - 続き気になります！頑張って下さい (2017年2月27日 23時) (
レス) id: 532e1d96ce (このIDを非表示/違反報告)
朧 - 凄い面白いです。続きをまっています。 (2016年2月15日 18時) (携帯から) (レス) id: 7f70fb0fdf (このIDを非表示/違反報告)
☆ - すごい面白いですっ。更新頑張って下さいっ。 (2015年8月13日 11時) (レス) id: 44695f2e16 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 待ってました！！ ＸＡＮＸＵＳが一体誰のことを話していたのかすっごく気になります！！ これからも楽しみにしてます！ (2015年8月8日 14時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
lotus(プロフ) - 待ってました！これからも無理なく頑張ってください！ (2015年8月8日 11時) (レス) id: 2faa68524c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：干支神 | 作成日時：2014年7月13日 13時
