何であんたら数値そんなに高いの？【名探偵コナン】

４９ページ:？？ ページ49

「まだダメ」

誰かが誰かに向かって言う。その光景は第三者から見ると、訳の分からないものだろう。人の形をしたもやが、同じく誰かも分からない人の形をしたもやに話しかけているのだから。

「利用されている今、今代に終わりは無い」

まるで何かの集会のようにもやが集まり、霧のようなものすらかかっていた。

「しかしそうは言えども盛者必衰。…その内ヤツらも滅びる運命」

不機嫌そうに、もやは言った。この場で上機嫌な者など、いない。

「しかしそれまで、今代の心は生きているか？」
「その分、私達が補えばいい。…既に滅びている私達が」

それもそうだ、と声が上がる。賛成意見が大多数で、反対する者なんぞいるわけがなかった。

「無知蒙昧な今代には手が掛かる」
「仕方ない。あいつらが干渉しているのだから」

ざわざわ、とざわめきを見せるもや達にまとめ役はいない。…勝手に誰かが喋っては誰かが賛成、または反対する勝手な集会。それがこのもや達がやっていることだ。

「…あんたは何か、不満そうにしているようだ」

ふと、話し合いを大人しく聞いていたもやが口を開き、隣にいるもう一人に話しかけた。

「…当たり前でしょう？」

そのもやはどこか不機嫌そうに返した。

「私のせいで、今代は終われずにいる。…私の責任なのよ」
「それは違う。…君に責任は無い。そもそも、結局は狂ったアイツの暴走のせいだろう？」

その言葉を言い切ると、辺りはシーンと静まった。気まずい雰囲気。…周りのもやは、少しずつ拡散していった。

「大丈夫だよ」

ふと、少女の明るい声が聞こえた。

「私がなんとかする。…それに、今代が変わればコレも終わって、次へと受け継がれると思う」
「…その根拠は？」
「私の勘」
「勘って…あんたなぁ」

少女の声をしたもやと、男性の声をしたもやが会話する。…男性もやは、少女もやの発言に対して少し呆れたようだ。

「いいや…その子の勘は外したことは無い」

男と女の中間辺りの声を持ったもやが、二人の話に割り込んできた。…男性もやは首は無いが、内心首を傾げた。

「大丈夫。私が今代の子に助言をすれば、きっとなんとかなる。…それに、あの子は今の所、私が話しかけても自分自身だと思ってるみたいだし」

少女は自信満々に言うと、じっと男性もやと向き合った。

「…なら任せたぞ、新参」
「うん、任せなよ。私にとって…先々代だっけ？」
「…二代前だな。とにかく頑張れよ」

もや達はそれをきっかけに、散らばった。

幕間→←４８ページ:親切

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す