47ページ:志望 ページ47
「やりたいことでも、見つかったか?」
「…おかげさまで」
私はきっぱりと答えた。…この少年に言われなければ、私は忘れたままだった。打開策は分からない為、諦めかけているものだが。
「で?何がしたいんだ?」
「逃げたい」
「へ?」
私が願いを口にすると、少年は素っ頓狂な声を上げ、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。…その反応がおかしくて、私は僅かに口元に笑みを浮かべた。
「…でも、死ぬ為に生き続けなくちゃいけない」
「へ、へぇ…そうなんだな」
少年が微妙に反応に困ったようなので、私は話を終わらせる為に少年から目を逸らした。…まあ多分分かってないだろう。私がしたいことを。まさか私がこの転生の繰り返しを止めたいなんて予想も出来ないだろう。
「…でも、ようやく笑ったな」
「お兄さんの反応がおかしくて堪らなくて」
「おいおい…」
年下に揶揄われて気分を害したのか、ジト目で見られた。…そういえば前世でも、こうやって友人達を揶揄っていたな。最近では揶揄うような相手もいなかった為、出来なかったが。
少し気分がスッキリした私は、前方に見覚えのある車から見覚えのある二人が降りたのが見えた。
「…」
「どうした?」
「…迎えが来た」
「迎え?…まさかあそこにいる二人か?」
私はコクリと頷いた。叔母さんや保護者だ。二人は私を見つけると、ホッとしたような顔をした。
「零ちゃん!」
「…叔母さん」
「良かった…どこに行ったのかと心配したよ」
「…ごめんなさい」
言葉を掛けられると、私は胸が締め付けられるような感覚に陥った。
…思ったけど、私は意外と…もう、今世に情が湧いてしまったのか。…手遅れってことじゃないか。
「…」
…実のところ、もう今更だったのでは。今世からは絶対にもう情なんて、とは思っていたけど、結局私には無理な話で、最初っから“無駄”だったのだ。…人間、感情無しでは生きられないものだと実感した。思わず、自分でも心の中で笑ってしまった。
「…一緒に帰ろっか」
保護者がそう言って、私は深く頷いた。
「良かったな、親御さん見つかって」
「うん」
「頑張れよ?」
「…うん」
少年はそう言うと、笑顔で私を見送った。…その頑張れは何について?とは聞かずとも分かった。私はその言葉を受け取った。
「零ちゃん、またね!」
「うん」
少女もそう言って、満面の笑みで手を振った。
「…ありがと、快斗お兄さんに青子お姉さん」
私も少しだけ笑みを浮かべて、二人に手を振った。
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卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか?出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卵かけご飯の醤油 | 作成日時:2019年5月17日 15時