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「じゃ、ちょっと待っててくれ」
そう言うとおじさんは恐らくは警察署であろう建物の中に入ってしまった。残ったのはおじさんの娘とその幼馴染である少年と、私だけだ。
「…本当にこれ、いいの?」
「いいっていいって。お前も気に入っただろ?」
私は髪に刺してある透明な花の髪飾りをいじりながら、気になって質問してみた。
…鞄は叔母さんの車の中だから入れられないし、服のポケットに入れるには少々小さい。だから仕方なく、髪に咲かせることにしたのだ。多分今も、輝いていることだろう。
「零ちゃん似合ってるよ!」
「…あ、ありがと…」
少女に褒められると、私はなんだか照れ臭くなって礼の言葉が尻すぼみになっていった。…こういう事で褒められることに、慣れていないのだ。世辞だろうと。
「…笑った方がいいって。親御さんもその方が安心するぜ?」
そういうものかな、と思った。
…今更、あの人と顔を合わせるには少々抵抗が生まれた。どんな顔をして会えばいい?散々迷惑をかけ、果てには迷子。…我ながら情けない。
「ほら、お前の父ちゃんと母ちゃんに元気なとこ見せねーと!」
「いない」
急に思ってもいないことを口走って、言ってしまったことにハッと我に返る。…こんなことを言う気はないのに、何故言ってしまったのだろう。
二人の視線が突き刺さる。…私の失言のせいで、その視線は痛く感じた。
「いないって?」
「…何でもない」
慌てて前言撤回しようと首を横に振ると、それ以上はいけないのだと思ったのか、言及してはこなかった。
「じゃあ零ちゃんは家に帰ったら何がしたい?」
気まずい雰囲気を変えようと、話題を切り出したのは少女だった。
「私は…」
どうしたい、か。…そういえばどうしようか。保護者に謝罪をすることが先決だろうけど。
「…寝たい」
読書よりも先に、そちらの方が出てきた。これでも全身筋肉痛な為、出来れば動きたくはないのだ。動くだけで体が悲鳴をあげるから、今日はゆっくりとベッドで横になりたい。
「じゃあ零。お前は何かしたい?」
「…?」
ふと少年がそんなことを聞いてきた。…先程、答えたはずだが。
「睡眠…」
「そっちじゃねえって。どこかに行きたい。何になりたい。誰かと一緒にいたい。…そう思わねえのか?」
…特にそのような欲はない。私はふるふると首を横に振った。
「本当か?」
少年何かを見透かすような瞳が、私を射抜いた。
まるで私が嘘をついていて、それが暴かれそうな感覚に陥った。
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卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか?出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卵かけご飯の醤油 | 作成日時:2019年5月17日 15時