32ページ:本心 ページ32
“いつまで目を逸らすつもり?”
うるさいな。
はっきりしない意識の中、頭の中に流れた言葉に苛立つ。
“過去を否定しないであげなよ”
思い出せば出すほど、後悔してしまう。なら、前に進むしかないだろう?
“あんたは止まっているだけ。あんただけ、変化を望んでいない”
変化を望まないことの何が悪い。この日常がずっと続けば良いのに、と考える人だっているだろう?
”違う。あんたは拒んでいる。過去を受け入れることも“
過去を受け入れてどうする。今となっては過ぎ去ってしまった、もう変わらないものを。あんなの、私を縛るただの鎖だ。
”あんたは恐れているだけだ。自分自身の感情に“
それが何だ。死ぬ前の感情は確かに恐ろしい。だが誰にだって恐怖というものはある。何がいけない?
”自分の感情に素直になれ。矛盾を抱えるくらいなら、自分の感情にくらい嘘をつくな“
だから怖いんだ。喜べば喜ぶ程、楽しければ楽しい程、その人生から離れるのが嫌で嫌で仕方が無くなる。怖いのだ、希望を持つことが。その分の絶望も味わって、転生後も思い出せばじわじわとそれに侵食されるから。
だったら何も感じずに生きては死ぬほうが、楽じゃないか。
「本当に?」
誰かが言った。私にはとっても聞き覚えのある声だった。
「人間、別れはつきもの…それに本当に何も感じずに生きようだなんて、人としての生とは呼べない」
ならどうするんだ。昔のことを思い出すと、ずきりと胸が痛む。こんな感覚は嫌だ。嫌いだ。なら感じない為には、もう全てに見て見ぬ振りをするしかないじゃないか。過去にも、感情にも。
「過去を否定すると、あんたの過去の友人達は?前世、前々世の家族は?…その人達も否定することになる」
…何が、言いたい。
「全てを受け入れて、その上で進め。人間ならいつだって幸福を掴もうとしろ。変化を望め」
無茶を言うな。人間、そんなに容易く変われるのなら苦労なんてしない。
「弱虫が。そうやってすぐに言い訳をする」
うるさい。
私は目の前の人の形をしたもやをきっと睨んだ。
「…“私”を受け入れて」
聞き飽きた声に、嫌気が差した。
「望む結末が欲しいのなら、まずは自分が変わってみせて」
ただ、その切実な声に何故だか今は無性に手を伸ばしたくなった。
「…あんたはまだ幸福を知らない」
問いただしたかった。私の知りたい答えを知っている気がして。
「鍵は全て、自分の中にある」
前世の私とそっくりな人と、目が合った。
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卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか?出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卵かけご飯の醤油 | 作成日時:2019年5月17日 15時