30ページ:内心 ページ30
中身は数冊程の本と、いくつかのヘアゴムや髪留めだった。
本はともかく、髪留めに既視感があった。この前買い物でこっそり買い物かごに入れたのを見た。あの可愛らしい黄色のヘアピンだ。
もしかしてあの買い物の時から私の誕生日の準備をしていたのだろうか。もう片方のヘアゴムも、恐らくはあの店で買ったものだろう。
「…!」
私は髪飾り等は置いといて、本の方を見てみることにした。正直、そこまで期待はしていなかった。ふりがな付きの小一が読みそうな本だろう、と勝手に予想していた。
だがその予想は裏切られ、私が図書館で見かけて気になっていたふりがなの無い本が多かった。ふりがなが無くては読めないだろう、と思っていたのか国語辞典もオマケで。
…おかしいな。これが読みたいとは言っていなかった筈だが。
「何で、読みたいの…分かった?」
「君は興味の無いものには目もくれないからね。図書館でちらちらとこの本を見ていただろう?」
私は無意識ではあったが、どうやら視線を向けていたようだ。…それは確かに分かりやすい。
「何でかは知らないけど…無理に抱えようとしなくてもいいよ。我儘もどんどん言ってくれていい」
胸の奥が、ジーンと温まった。…嬉しいという気持ちだ。ああ、放っておいて欲しいのに。…それでも感情が抑えきれず、本をぎゅっと抱いた。
…手に入れたものを永遠に失うのが怖い。
喜怒哀楽の喜の感情が溢れるほど、私の本心は不安に襲われた。…別に本や髪留め、ヘアゴムは来世でも手に入るだろう。簡単に。それより、問題は私のこの感情の矛先だ。
私はこの保護者に、嬉しい。と思ってしまった。
「…」
…悪い情では無い。当然のことだろう。誕生日を祝ってくれて、プレゼントまでくれて…ただ、だからこそ死んだ時が怖い。
再び死んだ時のあの感覚が、心の中で再生される。
「…っ」
私は唇を噛み締めて、しかし保護者に顔を見られたく無くて本で顔を隠した。
「…無理しなくてもいいよ」
不意に、保護者の手が私の頭に乗せられた。…そんなに、優しくしないで欲しかった。今までのことを思い出してしまうから。
私が震えていると、保護者は屈んで私を抱きしめた。…子供をあやすように背中を撫でられるものだから、私は今まで抱えていたものが抑えきれず、溢れるように…今世で初めて、涙を流した。小さな鳴咽が辺りに響く。
そんな私を、保護者はただずっとあやし続けた。
…ああ、よりによってあんたに慰められるだなんて。
1197人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか?出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:卵かけご飯の醤油 | 作成日時:2019年5月17日 15時