21ページ:悪夢 ページ21
___『相変わらずだなぁ、お前らも』
自分の持っているテスト用紙と見比べながら、もう二人の友人に話しかける少年。
___『流石、出来る男達は違うね』
呑気そうに手をヒラヒラとさせ、涼しげに笑う少女。
___『お前…それ嫌味だろ』
少女の言葉にムッとしながら、自分より点数の高い少女のテスト用紙を見る少年。
三人共、所謂高得点というやつで周りの少年少女達は羨ましげに三人のやり取りを見ていた。
___『私のは…まあ、裏技だよ』
___『何だ何だ、カンニングか?』
悪戯っぽく笑う少女に、一人の少年は冗談混じりにそんな事を言った。
少女はまさか、と無罪を主張するように両手を挙げ、
___『…私が生きてる内は秘密』
悲しげに目を伏せながらそう言った。不思議そうに二人の少年は少女を見たが、次の瞬間には少女は相変わらず余裕の笑みを浮かべていただけだった。
___『何だそれ、じゃあ死んだら教えてあげるってことかよ』
___『前提条件は、私が死んでてあんた達が生きていることだね』
何だそれ、無理だろ。と笑って返す少年。もう一人の少年は、そんな少女をじっと見ていた。
それまでの光景は突如、鏡が割れたように砕け散った。
「夜、魘されていたようだったけど…大丈夫かい?」
「…」
私はコクリと頷いたが、大丈夫と言えるものではなかった。目覚めも気分も最悪だ。
…前世の夢を見たからだ。私はチクリと痛む胸を抑えた。
あの時のことは、思い出したくなかった。特に高校時代のことなんて。悔いを、後悔を…あの時の充実感を思い出してしまうから。
そして、死んだ時の…その大きな充実感が多大な喪失感に変わり、私を襲ってきた時のことを思い出すから。だから、出来れば忘れていたい。
ようやく友人の顔や名前だって忘れられたのに。
「…大丈夫かい?どこか顔色が悪いようだけど…」
私は再び、小さく頷いた。
保護者が作ってくれたサンドイッチが目の前にあるが、どうにも今日は食べれる気はしない。かと言って残すのは、食べ物に悪い。
「…体温、計ってみようか。体が熱いよ」
いつの間にか私の額に手を当てていた保護者はそう告げると、体温計を探しにどこかの部屋に入ってしまった。
…悪夢を見てしまったから熱が出たのだろうか。それとも、風邪を引いてしまったから悪夢を見てしまったのだろうか。どちらにせよ体が重い。自由に動けない。
戻ってきた保護者は何重にも重なって見えた。ああ、目眩もセットか。
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卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか?出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卵かけご飯の醤油 | 作成日時:2019年5月17日 15時