19ページ:約束 ページ19
「わー、折り紙綺麗だね!」
「…」
少し面倒そうに目を逸らすと一緒に折り紙をやっている女の子とよくいる男の子二人に目がいった。男の子達も一緒に折り紙を混ざってやっているようだった。
私は作った鶴を床に置き、ふと窓の外を見ると保護者の車が目に入った。…そろそろお迎えの時間か。
そう思い、立ち上がった。
「…もう帰るから」
「そうなの?分かった、またね!」
一緒に折り紙をしていた女の子は私に笑顔を見せ、手を振って別れを告げた。他二人も、またねーとこちらを向いた。
…流石にずっと態度が悪いとまた先生から何か言われかねない。そろそろ先生が私に問題児でも見るかのような目を向けてきた為、仕方なく今日は遊んでやった。
帰宅の支度を整えると丁度いいタイミングで保護者が現れた。既にいつでも帰れる格好の為、
「準備が早いね」
と私に笑いかけた。
…私を視界に映すとどこか悲しげになったのは、気のせいだろうか。
「君には将来の夢と無いのかい?」
私が首を振ると、保護者はそっか、と返した。
車の中…というか、運転座席からはどこか哀愁が漂っている。
「…今、楽しい?」
私はその質問にどう答えようか迷った。楽しいと答えても一発で嘘だと分かるし、かと言ってバッサリと楽しくない、と答えると困惑されて気を遣われるかもしれない。
私は前者の答えでは嘘だとすぐ見抜かれるし、後者だと気遣われて、同情されているようで気分が悪くなりそうで嫌だった。同情されても、お前には何の関係も無いことだ、と声を荒げて言いたい。
私は保護者が思っているより別の理由で楽しくないんだから。
「…」
だから迷った結果、私は前へと向けていた視線をやや斜め下へと移した。バックミラーから私の様子を見た保護者は何も言わなかったが、表情から物語っていた。
保護者は、悲しげに困ったように笑みを浮かべていた。仕方ないな、と思いながらも本当は嫌そうな、もやもやとしている感じのものを。
「そっか…でもその内、楽しいと思える日が来るよ」
そんな日が来ても、どうせその思い出を引きずったまま死んでは生きて後悔し続けるくらいなら、私は別に来なくてもいい。
「だからさ…ちゃんと生きるって僕と約束してくれないかい?」
赤信号だからか車を止めた保護者は、こちらに小指を差し出した。
…私も小指を絡ませろ、ということだろう。
「…」
私は、こんなことをしても無駄だろうな。と思いつつ私はそっと小指を差し出した。
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卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか?出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卵かけご飯の醤油 | 作成日時:2019年5月17日 15時