わけわからん ページ7
寝台に横たわる治は、一言で言えば綺麗。
ナチュラルだけどメイクをして、被り物をしているから一瞬女の子と間違ってもおかしくは無い。
「本当にお美しいお方だ。」
多分この言葉はセリフではなく本心だと思う。
私は、ゆっくりと治と距離を縮めていく。
会場の空気がなんとなくだけど緊張感漂う。
「(落ち着け、落ち着け。今治が見えているのは私だけや。なんか合図……ッ!?)」
一瞬だけ思考が止まった。
王子様から白雪姫へキスするストーリーだと言うのに、まさか。
治「ほら、はよ避けへんと」
私だけに聞こえる声で治がそう言うので、ハッとして恥ずかしさを隠すようにゆっくりと寝台から離れる。
「し、白雪姫が目覚めた…!!!」
ある意味私もその言葉で目覚めた。
そうだ、今は演技中。
貴「(治のバカ……!)」
思考回路はもうぐっちゃぐちゃだが、何とか最後のよく分からんミュージカル風に白雪姫と踊るシーンをこなす。
王子がリードするはずが、白雪姫にリードされながら踊った気がする。
けど周りからはちゃんと王子がリードしてるようにみせた…はずや。
『これで、2年1組の演劇を終了致します』
そのアナウンスでやっと重荷が降りた。
一気に力が抜けて、舞台裏でへたり込む。
クラスの子達がお疲れと声を掛けてくれるが、テンション低めにありがとうと返すくらいの気力しか今はない。
貴「終わった……」
さっきの事を思い出す。
あれは、確かに。触れるだけだったけど。
貴「完全に口と口くっついたやん…!」
恥ずかしさがどんどん込み上げてきて、顔を覆う。
表舞台の片付けの音、会場内のざわめき。機材を運ぶクラスの子達の声も今は耳に入ってこない。
治「お疲れさん。A」
けど、治の声だけはハッキリと聞こえてきた。
貴「治…あれ、どういうつもりや」
お疲れというより先に、私からはこの言葉しか出てこなかった。
治「着替えてから、体育館裏来てくれへん?」
貴「…うん」
さっきの行動の意味を、しっかりと聞かなければ。
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矢風(プロフ) - 黒瀬さん» そう言って頂けると、励みになります…!更新は不定期なのですが頑張りますね!ありがとうございます!! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 62a30a66bf (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬 - とても面白くて続きが気になります!更新頑張ってください! (2020年3月9日 0時) (レス) id: c0f0417cc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:矢風 | 作成日時:2020年1月20日 1時