大阪出身の多坂ちゃん2 【宮治】

演技は上手い方 ページ6

『只今より2年1組による演劇、白雪姫が始まります。』



同じクラスのナレーター係の子の声が聞こえた。



緊張するけど、よく考えてみたら治の出番がほぼフルである。
私なんかまだ男装だし、最後の方の出番だけだし全然マシなのでは…と今更思った。



貴「治…頑張りや…」




そして、劇が始まった。





「ぶふっ！」



始まって白雪姫役の治が鏡に映し出された瞬間に、誰かの吹き出し笑い。
予想はつく。



貴「(侑め……笑うなや！)」




でもそれ以外にも、治が白雪姫やー！とかマジかよ…とか黄色い声とドン引きっぽい声が沢山聞こえてくる。



でもこれは完全くじ引き制なのだ。だから治は悪くないねん。だから、せめてドン引きはやめてやって欲しいと思う私である。




そうして物語がどんどん進む中、白雪姫が毒林檎を食べて倒れるシーン。



宮「おお…すごい演技力」



隣の里咲ちゃんが感嘆の声をもらした。
案外治は棒読みとかしないタイプだから、やっぱ一生懸命なんやと私も「ほぉ〜」と感嘆の声。



宮「そろそろAちゃんの出番やね。頑張ってな！」




里咲ちゃんに押し出され、治が寝ているお花のベッドと小人が会話している場面へ。



やっとこさ王子様の登場だ。




「ん？あれは、○○国の王子だ！」



そう小人役の子に呼ばれ、ステージに姿を現す。



シーンと静かになる会場。
もう何言われても私は動揺せえへん。…多分。



「か、かっこええ…！」



どこからか聞こえた声。


動揺しないって言ったばかりなのに、女の子からのかっこいいで動揺しそう。



横目でちらりとバレー部の方を見たら、みーんな同じ顔しとる。ぽかーんて。



なんか笑いそうになったけど、それを堪えて小人からのセリフを聞き、それを返す。


貴「…！なんと美しい方なのでしょう。この方は…？」



元々私の声はどちらかと言えば低い方で、それをもう少し低めにしている。
役に入るなら、本気で行かなあかんと思うし。



そして、どんどんとあのラストシーンに近づいてくる。
キスはせえへんけど、やっぱりなんとなく緊張してしまうものだ。



「もしかしたら、王子様のキスで目覚めるかもしれません！」


小人のこの言葉で、会場は少しざわつく。



白雪姫王道ストーリーのはずだけど、やっぱり人気者の治とそういうシーンになってしまうのだから当然か。




私はゆっくりと治が寝ている寝台へ向かう。

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