頭痛が痛い【歌い手】

二十錠目 ページ21

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まふside


その日は打ち合わせもなく、冷蔵庫の中にもちゃんと食材があったから、今日一日はいろは達と遊ぼうと決めていた。


でも、お昼の時間になってさすがに小腹が空いてきたので、軽く何か食べようと冷蔵庫を漁っていると、急にテーブルに置いてあったスマホが鳴り出した。


あまりにも突然だったし、そうそうスマホに電話を掛けてくる人なんていないから、すごくびっくりして慌てて出ると、スマホの向こうから｢あっ…まふ？｣と言うさかたんの声が聞こえた。



｢あれ、さかたん？どうしたの急に、珍しいね｣


｢……今すぐ来て、〇〇病院ってとこ｣


｢え？え、えー、なんで？｣


｢いいからはよ来て！｣


｢え、あ、はい｣



ブチッと音がして、スマホには通話終了の画面が出てた。それと同時に、電話を掛ける前に何回もメッセージを送ってきていた事がわかり、本当に急ぎなんだなってわかった。


いろは達にお留守番しててねと謝って、最低限の荷物だけを持って、言われた病院にタクシーで向かった。




｢さかたん？なんかあったの｣


｢……まふ…｣


｢うん？｣


｢桜良、一部の記憶が無くなってるらしい｣


｢は？｣



冗談だよねって言おうとしたけど、さかたんの顔を見る限りそんな雰囲気じゃなかった。



でも、なんで……あっ、そういえば…


“……脳障害を起こす可能性があります”


言っ、てた…。



｢さかたん｣


｢……何｣


｢桜良は…、何を忘れたの｣


｢………俺らのことはみんな覚えてる。けど、
……歌い手そのものを忘れてる｣


｢……そっか｣



神様は酷い。なんで、桜良から歌を奪うの？どうして、桜良はあんなにも歌う時は楽しそうにしてた。


なのに……



｢………な、んで……｣



泣きたくなるや。



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