間違ってないよ ページ10
視線を下げたままの隆弘に、私は思いのたけを静かに、冷静に言葉にした。
「私は隆弘と一緒にいることが幸せだった。我慢も、寂しさも、不安も、隆弘と一緒に乗り越えたかったよ……」
隆弘は2、3度頷いて視線を上げ、私と目を合わせてくれた。
瞳に哀しみの色を湛えて。
「私への罪悪感なんて……必要なかったの。必要だったのは、気持ちを伝えることだった。私も、隆弘も……」
『うん。そうだよな……』
そう。
私たちは未熟過ぎた。
ちゃんと気持ちを伝え合えばよかったのに。
お互いを想うあまり、できなかった。
しなかった。
下唇をぎゅっと噛み締めて頷く隆弘に、夜風に舞う桜の花びらが降ってくる。
舞台の山場、クライマックスの花吹雪のように、
私たちの門出を祝ってくれている。
「桜、本当に綺麗だねぇ。こーんな素敵な場所教えてくれてありがとう」
明るく、笑ってそう言えば、隆弘はどこか寂しげな表情で頷く。
そして私たちはしばらく、一緒に桜の木を見上げた。
『……俺さ、この2年間、突っ走ってきた。みおをひどく傷つけて、自ら孤独を選んだ。自分の全てを音楽、仕事、ファンに捧げるために』
「うん……」
『でも、ふとした時に思い出すのは、みおだけだった。こんな風に綺麗な景色に出逢った時、美味いものを食べた時、良い映画を観た時。幾度となく思った。みおと一緒にいられたらって……』
「あの、隆弘、」
右隣から、真っ直ぐに見つめられていることはわかっていた。
でも、私は向き合えなかった。
続きがあることに気づいたから。
続く言葉を聞くことはできないと、わかっていたから。
『みお、勝手だってわかってる。でも、俺は今でも……、』
「隆弘。隆弘が選んだ道は、間違ってないよ。別れ方は理不尽だったけど…」
『みお……』
「間違ってない。」
隆弘の言葉を遮って出た言葉は本心だった。
心から出た言葉。
言ったら、なんだか心がふわっと軽くなった。
ずっと胸の奥深くに根をはっていた想いが、すーっと簡単に抜け落ちていくような、そんな心地よさまで感じるほどに。
『みおっ、俺はっ……』
「やめて。言わないでよ。……お願い」
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さら(プロフ) - chr916さん» お返事遅くなりました。何度も読み返してくださって嬉しいです。続きを更新しました。コメントありがとうございました。(^^) (2022年10月11日 4時) (
レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» ご無沙汰しています。続きを少し更新しました。いつも感想をありがとうございます。(^^) (2022年10月11日 4時) (レス) @page49 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
chr916(プロフ) - 何度も読み返すくらい大好きです！続きが早く読みたいです🙇♀️ (2022年10月2日 19時) (レス) id: 2b8ccb9b49 (このIDを非表示/違反報告)
ao.ao - 更新ありがとうございます！胸キュン❤️いいなぁ〰と想像膨らませて読ませて頂きました。続き早く読みたいー待ってますから〜 (2022年7月16日 1時) (レス) @page45 id: 80a471aa5a (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» コメントありがとうございます。嬉しいです(^^)今後、2人はどうなるのでしょうか。いつも読んでくださって感謝です。 (2022年7月12日 10時) (レス) @page43 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さら | 作成日時：2021年5月15日 11時
