愛おしい香り(side N) ページ41
『あの、ごめんね。紗和ちゃんに昔のことを話したことがあって…、それであんな風に……』
みおがそう言って気まずそうに俺を見る。
‘気にしてないよ’と、俺が返事の代わりに笑みを返すと、パッと俺から視線を外すみお。
その仕草に懐かしさと愛おしさが込み上げてくる。
照れた時のみおの癖。
『……あ、こんなとこでごめんね。うち、入る？』
「(ありがと)」
今度は囁き声で返事をし、みおが手にしているエコバックを引き受ける。
結構重い。
『あ、ありがとう。…あのっ、1人でこんなに飲むわけじゃないからねっ！ 紗和ちゃんと飲むつもりだったからっ』
慌てるみおが面白くてわざと含み笑いをすれば、今度は頬を膨らませてる。
「(わかってるよ)」と笑って囁いても、頬を膨らませたまま先を行くみお。
かつて何度も通った懐かしい場所での自然なやりとりは、俺の頬を緩ませる。
『どうぞ…』
と玄関に通された時には、緩んだ頬はさすがに引き締めたけど。
『あんまり隅々まで見ないでね。片付いてないとこあるから……』
「……」
何年ぶりだろ、ここへ来たのは……
玄関の棚に置かれたキートレイは、見たことないものに変わり、壁に飾られている絵も初めて見るもの。
なのに、やっぱりとても懐かしい気持ちになる。
泣きたくなるような。
きっと、この香りのせい。
2人一緒だった頃のままの、変わらぬ愛おしい香り。
靴を脱いでリビングへ向かう間、懐かしさと緊張で妙な気分だった。
じわりと手に汗をかいてる自分がなんだか笑える。
中学生かって。
『先に着替えてきてもいい？』
俺が頷いて返事をすれば、みおもまた緊張の面持ちで部屋へと向かった。
「…ふぅ」
1人になり、深く息を吐いてリビングを見渡す。
ここは変わらない。
昔からみおはあまり部屋に物を置かない。
シンプルでスッキリとした部屋。
ここも昔のままだ……
そう思って近づいたのは、みおの好きなものが詰まった棚。
音楽CDやDVDが収納されている。
一緒に聴いたオーケストラの音源やビリージョエルのアルバムもそこにある。
変わらず、音楽がみおの側にある。
「(良かった)」
『何か言った？』
振り返れば、いつの間にか着替えを済ませて、キッチンから俺を伺うみおがいた。
聴いていい？と目線で問えば、ふわりと微笑むみお。
ビリージョエルのアルバムをセットした。
想い溢れるひととき(side N)→←そっと握らせる鍵(side N)
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さら(プロフ) - chr916さん» お返事遅くなりました。何度も読み返してくださって嬉しいです。続きを更新しました。コメントありがとうございました。(^^) (2022年10月11日 4時) (
レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» ご無沙汰しています。続きを少し更新しました。いつも感想をありがとうございます。(^^) (2022年10月11日 4時) (レス) @page49 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
chr916(プロフ) - 何度も読み返すくらい大好きです！続きが早く読みたいです🙇♀️ (2022年10月2日 19時) (レス) id: 2b8ccb9b49 (このIDを非表示/違反報告)
ao.ao - 更新ありがとうございます！胸キュン❤️いいなぁ〰と想像膨らませて読ませて頂きました。続き早く読みたいー待ってますから〜 (2022年7月16日 1時) (レス) @page45 id: 80a471aa5a (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» コメントありがとうございます。嬉しいです(^^)今後、2人はどうなるのでしょうか。いつも読んでくださって感謝です。 (2022年7月12日 10時) (レス) @page43 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さら | 作成日時：2021年5月15日 11時
