君と 3

つかまる ページ26

余興を終えて、一旦ゲスト用の待合室に西島君と戻った。



緊張感から解放されて、ソファに座り込んだ私。
西島君も後からゆっくりと隣に座った。



『はぁ〜終わった〜』



西島君は天井を見上げ、目元を腕で覆いながら言った。



「終わったね。よかった。ふふっ、すごい汗だね。はい、ティッシュ」



テーブル上にあったティッシュのボックスを彼の膝の上に置いた。



『みおちゃん拭いて〜』



「えっやだよ」



『けち』



はぁ？
けちって何よ。



「…わかった。腕どけて」



今日だけ、やってあげる。



『やった〜お願い』



西島君は目を閉じて、おとなしく私に汗を拭かれてる。
なんだかその姿がいつもの西島君らしくなくて、無防備で可愛くて、ついにやけちゃう。



『何ニヤニヤしてんの？』



「えっ!?」



うそ、見られてた!?



『かわいいんですけど』



「かっかわいくないよ。もうっ、からかうなら自分でやって」



恥ずかしさのあまり、かわいげの無い言い方をしてしまう。
もう、やっぱりいつもの西島君だ。
彼のペースになる前に、早く会場に戻ろう。



今日の私は香織の結婚式で浮かれて幸せボケしてるから、西島君と2人でいちゃだめ。



「私、もう戻るね」



『待って』



立ち上がろうとしたら、西島君に腕をとられた。



『みお、本当にありがとう。すごく良い歌だった』



真剣な表情でそう言うから、私はまた彼の隣に座った。
目頭が熱くなっていく。



「私の方こそありがとう。西島君のおかげで、私は今こうしていられるの。あの時、西島君が話を聞いてくれたから。だから、ありがと」



『違うよ。みおが自分で選んだから、今こうしてるんだよ』



「それにこのサプライズも。香織たちがあんなに喜んでくれるなんて。私今とても幸せで、西島君と歌うことができて、本当によかったって心から思ってる」



『俺も。みおと歌うことができて、それを2人が喜んでくれた。こんなに嬉しくて、幸せことはない』



あ…



手、繋いでる。
いつの間に。



優しい彼の瞳。
そんなにまっすぐ見つめないで。



恥ずかしいってば。
ドキドキしてきたし…



『みお、目をそらさないで』



「…」



『俺を見て、みお』



西島君の甘い声に抗えなくて、ゆっくりと顔を上げれば、案の定、熱を帯びた彼の瞳につかまってしまった。

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