7色の後ろ側 8《赤》

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「KIKIさんて、本名キリコって言うの？」

重「おん。らしいで」

「あ、へー...」


大毅の口から女の子名前が出るってなかなかレアな事で驚いてしまった。


望「え、しげKIKIさん知ってんの？前知らん風やったやん」

「前？」

望「大阪で生放送の時も共演してんけど、そん時しげに声かけてきてさ、しげ誰？って感じやったやん」


へぇ、そんな事あったんだ。
...でもそれって、知ってたのに知らないふりしてたって事？


重「いや、そん時はよう知らんかってんけど。
その後こっちで友達と飯食う時にさ、おってん」

「え、何で？」

重「俺の友達とキリコが知り合いやったから」


え、それって


望「その友達って女？男？」

重「そりゃ男やろ」

望「それでその場に女呼ぶとか変くない？
しげの事紹介してほしくて来たんちゃうの？」


私が思う疑問を望が見事に代弁してくれる。
てかしげそんな、急に女の子呼ぶのとか、嫌がりそうなのに。


重「え、いや、ちゃうやろ」

望「お前がボケとるから気づかんかっただけちゃうん？」

重「...あ？」


正直もうちょっと、問いただしたい。
だって全部初耳の事で。
だけど2人の雰囲気を悪くさせる訳にもいかない。


「ちょっと。
望もしげもヒートアップしてるよ。落ち着いて」

望「やって、」

「望」

望「...ん。しげごめん、変につっかかって」

重「別に、ええけど..」





美「皆車きたから移動するよー」


美和がそう声をかけて皆わらわらと控室を出る。
私は1番後ろを歩きながら、スマホでKIKIさんをこっそり検索した。


ちょっとノスタルジックな雰囲気のかわいい女の子。
今時ではないけど儚い雰囲気とか、透明感は元の素材がいいから、だな。

複数のCMや映画の主題歌を担当してる、着実に人気をつけてきてる若手アーティストって感じだ。


別に女の子とご飯行くのを禁止したいとかそんな事はない。
共演者さんとかと交流があるのっていい事だと思う。

ただ、こうやって知らなかった情報を不意に知ってしまうのが、なんだか、なぁ。

でも一々女と遊ぶ時報告してって言うのも、なんだか、違う気がする。




今日の移動車はありがたい事にドライバーさんがついてくれてて、私も後部座席にお邪魔する。

空いてる席に座ると隣を埋めるように望が座った。


「ちょっと」

望「ん。すぐどく」

「何？どうしたの？」

望「大丈夫？さっきの」


年下になんて気の使われよう。
そして的を得てるという。


「大丈夫だよ、別に友達としてでしょ。普通の事だよ」


まるで望にも、私自身にも言い聞かせるように私は言葉を吐き出した。

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