7色の後ろ側 6《赤》

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side 重岡

「ちょっとお手洗い」

重「おう」
一「行ってらっしゃい」


粗方飯を食い終わった所でAが席を立った。


一「ここ、本当に美味いでしょ」

重「めっちゃ美味い。個室あるし。また来たいわ」


一哉見たら嬉しそうに笑っとって。
ほんの数十分おっただけで、こいつが悪い奴じゃない事は伝わった。

ちょっと雰囲気照史に似てるんかな。
たぶん面倒見とかええタイプ。


重「あー、のさ」

一「ん？」

重「俺な、Aから聞いてんねん。自分らが昔付き合ってた事」

一「え！？あ、えー...。そう、なんだ。
あの、別れた理由とかも聞いてる、訳だよね」

重「ん」

一「そっかー...。だから最初しげ敵意剥き出しだったのか(笑)
俺てっきり同僚でAの事好きなのかなって、だから俺の事よく思ってないんだと思ってた」


そう言って困ったように笑う。
まぁ一哉の読みも結構いい線いってんねんけど。


一「Aが嘘つくとは思えないし、聞いてる通りだよ。
俺が一方的に傷つけたんだ」

重「それわかってて何で今日、声かけてん」


俺はたぶんまたキツい顔してる気がする。
やけど一哉はそんな俺から目を逸らさへん。
さっきまでと違う男らしい顔して見返してくる。


一「...ずっと会いたかったんだ。傷つけた事、後悔してる」


俺はたった今後悔した。
何でこんな質問してもうたんやろう。
聞きたない。この後こいつがいう言葉。




一「今でもAの事愛してるんだ」




歯が浮きそうな台詞を真顔で、俺相手に言うてくる。

おい神ちゃん、こいつマジもんのロマンチック野郎やで。
やけどさ、いじれへんねん。
本気で言うてるの伝わってくんねん。


重「...そんなん、今更やん」

一「本当にそうだよな。
だから俺さ、正直2人をスーパーで見かけた時諦めようって思ったんだよね。

Aが返事くれないのはこういう事だったんだって。

側から見たら2人カップルみたいだったし。
別れて2年も経てば、新しい相手できてても何もおかしい事ないよなって。

でも違うなら、もうちょっと頑張ってみるよ」


そう言うたら伝票を持って部屋出て行きよった。
やられたって気づいて慌てて財布とカバンを持って後を追う。


重「なんぼ？」

一「え？いいよ俺が無茶言ってお邪魔したんだから」

重「ええって。
俺、一哉に借り作りたないねん」

一「...」


レジの金額見て半分、嘘、見栄張ってちょっと多めに金を置く。


「...何やってんの？」


不思議そうな顔してトイレから戻ってきたAに荷物を渡す。


重「出んで」


空いた手でAの腕を掴んで店を出た。

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