指先に魔法、耳元に宇宙《緑》

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side 神山

重「神ちゃんどこ行くん？」

神「ちょっとその辺散歩してくるー」

重「全然ええけど、ファンの子らに見つからんようにな」

神「おん」


もろもろ仕事終わらして、皆で飯食って一度ホテルに戻った。
Aに声かけたらすぐ折り返しの連絡がきたからスマホと財布持って靴を履く。


神「しげ何か買ってきてほしいもんある？」

重「なんもー」

神「あいよ」


それだけ確認して部屋を出た。
館内は微妙やし、屋上の展望フロアとか人おるかな。
冬は越えたとはいえ、まだ夜は冷えるしおらんとええねんけど。

予想は的中して、見事誰もおらんかった。
自販機でホットのレモンティー買ってベンチに腰掛けて通話をかける。


神「...もしもし？」

『もしもし』


ちょっとぶりに聞くAの声はあいかわらずかわいらしい。
やけどやっぱりな、最後がの通話があれやったから。
いや、俺があかんねんけどな？
やけどやっぱり消したいあの日の記憶...！

はよ話題変えたくて、ずっと気になってたネイルのこ事を聞いた。
最近写メくれてなくて、俺密かに楽しみにしとったから。

なんか、Aの大事な所を見せてもらえてる気持ちになる。

たぶん普段はずっと隠しとるAのかわいいとこ。
キラキラした綺麗なものがすきなとこ。
そういうのがAの作ったネイル見とるとわかる気がして。

それを見せてもらえる優越感と言ったら。
...あかん、俺何様や。

やけどほんまに、それが嬉しかった。


『今度ね、高校の友達の爪やってあげるんだ』

『好きな人とデートなんだって、いいよね』

『うん！頑張る』


そりゃあ楽しそうに話しよるから。


神「Aってネイル仕事にはせぇへんの？」

『え、』


実はやりたいんだよね、とか言うと思ったのに予想とはだいぶ違う反応。


神「ネイル好きやろ？見てて上手いなぁって思うし」

『だって、もう仕事してるし』

神「そりゃそうやけど、若いしやる気さえあればいくらでもやれるんちゃう？」

『...それはそう、かもしれない、けど』

神「けど？」


Aが暫く口を摘んで、無言が続く。
俺はただ寒空の下返事を待った。


『ああいう業界って華やかだから...地味な私には似合わないよ』


ああ、また、呪いの言葉。


神「それは誰に言われたん」

『え』

神「かわいくないとか、地味とか、魔女とかそんなん。
Aは誰に言われてきてん」

『...』

神「いやや」

神「俺はそんな呪いみたいな言葉が、Aの未来を潰してるなんて納得できへんよ」



やって、誰にそんな権利があんの？

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