指先に魔法、耳元に宇宙《緑》

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もう、全部言ってしまおう。
それで、終わらせよう。

そう思って話ができるか聞いたら、夜にはできるって返事が届いて。
自ら送っておきながら、緊張してきた。

それは見事に仕事にも影響した訳で。


社「Aちゃんこれ数字ズレてない？」

「えっ、は、すみません！すぐ直します」

社「珍しいね、こんなミス。大丈夫？具合悪い？」


そんな心配までされる始末。


社「俺ら若い子の体調とか気づける程敏感じゃないからさぁ。具合悪かったりしたら無理しないで言うんだよ？」

「大丈夫です、ありがとうございます」


お父さんが紹介してくれた事務所は、正直だいぶ居心地がいい。
それこそ女は私ともう1人社長の奥さんくらいだけど。

私くらいの歳の子なら本当はもっと華やかな子がよかったんだろな。
だけど皆こんな私なんかに、優しく、良くしてくれる。


...気を引き締めなくちゃ。

飲んだ事ものないブラックコーヒーに手を出したけど、やっぱり苦くて。
砂糖とミルクを足して流し込んだ。









神『仕事終わったからいつでも話せんで』


夜10時回った頃そんな連絡がきて、私も話せるよって返事を返す。

少ししてかかってきた着信を確認して耳に当てた。


神『...もしもし？』


あ、やっぱり、きれいな声。


「もしもし」

神『連絡はとってたけど、声聞くん久しぶりやな』

「ね、なんか、緊張する...」

神『なんでやねん(笑)』

「最後話した時、智洋酔ってたから」

神『あかんって、それ、ほんまにもう、忘れて！』

「ふふ(笑)」


らしくなく慌てる智洋がなんだかかわいくって。
全部正直に言ったら、もう話せなくなるのかなって思うと寂しかった。


神『..き..いん？』

「え？」

あ、やばい、聞き漏らした。


神『最近、ネイルしてないん？』

「え？ううん、むしろすごいやってる」

神『あ、そうなん？なんや、最近写メくれへんからやってないんかと思った』

「そういえば、そうだね」


智洋の事悶々と考えて作ったネイルを、智洋に見せようとはなかなか思えなかった。


神『義務でもないしな(笑)
やけど楽しみやったからさ。ネイル見とったらさ、Aこんなん好きなんやってわかるやん？』


そういう事、易々と言わないで欲しい。


「今度ね、高校の友達の爪やってあげるんだ」

神『お、ええやん』

「好きな人とデートなんだって、いいよね」

神『ほんならA頑張らなな』

「うん！頑張る」


そう、頑張ろう。
言おう、ちゃんと『Aってネイル仕事にはせぇへんの？』

「え、」


だけどタイミングが掴めないまま、また次の話題が始まった。

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