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第四十一話 「心配性の彼」 ページ42







そう言って、利吉さんは懐から紙を取り出し、机の上に置いてあった筆をとった。




「この学園を中心として、北西側の山を抜けたところにツキヨタケ城がある。」




利吉さんは取り出した紙に学園を中心とした地図を書く。



「忍術学園は山に囲まれているから、
ここまで来るのには北西側の山を越えなければならない。」


『なら、私たちはその反対側の南東へ逃げると言うことですか?』


「いや、きっと向こうも私たちがそうすると考えるだろう。」





ツキヨタケ忍軍は武術に長けていれば頭の回転も早い....
だから簡単な作戦では通用しない。


相手の想像を遥かに超えるような作戦でないと駄目だ。





「そこで考えたんだが、
私たちはツキヨタケ城がある北西へ向かおう。」


『....!入れ違い作戦ということですね。』


「そう言うことだ。」




確かに、私たちが学園にいるとわかっているなら真っ先にここまで向かってくる。

血眼になって私を探しているんだから、途中ですれ違ったとしても気づかないだろう。





『いい案だと思います。』


「よし、じゃあ今日の深夜、丑の刻の時間帯に決行しよう。」




私はコクリ、と頷くと、利吉さんは立ち上がって部屋の入り口に足を向けた。




「私は父上に話してくるよ。
君は作戦開始までゆっくりしておくといい。」




足を引っ張られたら困るからね、と悪戯そうに言う利吉さん。

ほんっとにこの人は...!どれだけ私をからかったら気が済むの!





『利吉さんこそ!敵に足をすくわれるようなヘマはしないでくださいね。』




ふんっ!とそっぽを向くと、「冗談だよ」と笑いながら私の機嫌をとりにくる。

機嫌をとるんだったら最初からからかわないでくださいよ、なんて頬を膨らませていると、
ふと、利吉さんの笑い声が小さくなった。



不思議に思って利吉さんの方を見ると、
彼はなぜか不安げに下を向いていた。






「....ほんとは心配なんだよ、君が。」





急に静かになった部屋で、利吉さんはポツリと呟く。






「誰にも傷つけさせたくないんだ。」






そう言って私に近づき、目線を合わせるように膝をつく。


さっきも見た、私を心底心配するような、彼の切ない表情。






彼がどうしてそこまで私を心配してくれるのか、

....私には分からなかった。




第四十二話 「緊張」→←第四十話 「お互い頑固」



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春の黒猫(プロフ) - 依利さん» コメントありがとうございます!すごく励みになります...頑張ります^ ^ (2020年10月12日 21時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
依利 - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年10月11日 21時) (レス) id: ed636e8d4e (このIDを非表示/違反報告)
春の黒猫(プロフ) - 菜々さん» コメントありがとうございます。読者様が苗字を設定しない場合、元々の主人公の苗字を設定しておいて欲しいとの事でしょうか...?一応この小説は苗字と名前の設定が可能になっておりまして、あえて苗字を設定していないのですが...(・・;) (2020年10月9日 16時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
菜々 - こんにちは読みたい所ですが設定のとこ少し直した方思います参考なったら嬉しいです例えば→夢崎(名前)。こんな感じです読みづらくすみません (2020年10月8日 16時) (レス) id: ea6e979d26 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春の黒猫 | 作成日時:2020年9月22日 16時

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