竜胆の花束を貴方に(煉獄杏寿郎)2

誤解？ ページ21

『はい、良いですよ。Aさんの主な症状は打ち身と擦り傷ですね。あと…その手の傷ですね。』
蝶屋敷へと移動した後、Aはしのぶの診察を受けていた。
「クナイを取る時に切ってしまったみたいで…」
そう言うとAは、利き手の掌に出来た刃物による切り傷を思い出す。
今は、しのぶによりしっかりと包帯が巻かれているが、その傷はちょっと切った傷では無い程、深い傷だった。
『嘘ですね？』
しのぶは、少し怒ったように語尾を強める。
「……。一か八かでしたが……小瓶に入った血だけでは間に合わないと思ったので、咄嗟にクナイで手を傷付けちゃたんです……。」
猗窩座にクナイを投げた時の事を思い出しながら、Aはぽつりと呟いた。
『その傷、しばらく引きつったり痛んだりします。あと、今は身体が興奮しているので痛みも感じにくいでしょうが、もう少しすると鈍い痛みを感じ始めると思います。無理せず、辛い時は声をかけてくださいね。』
しのぶは、そう言うとそっとAの頭を撫でた。
「ありがとうございます……しのぶさん。あの……杏寿郎さんは？」
Aが心配そうに尋ねると、しのぶは少し難しい表情になる。

杏寿郎の症状は、打撲と肋骨の骨折。
幸い内蔵は痛めていなかったが、折れた肋骨は四本で簡単に回復は見込めない。
しばらく蝶屋敷に残って、回復訓練を行う。

しのぶの説明を聞いたAは、ほっと胸をなでおろした。
思っていたよりも重症では無いらしい。
「よかった…」
『…本当に煉獄さんの事が好きなんですね。』
Aのその言葉と安堵した表情を見たしのぶは、可愛い妹に向けるような慈愛に満ちた眼差しだ。
「…想い合う事が出来なかったとしても、私にとって杏寿郎さんが大切な人なのは変わりませんから。」
どこか寂し気にふわりと微笑むAに、しのぶの胸は締め付けられるようだった。
『Aさん…あの時の煉獄さんの言葉ですが…』
「大丈夫です！暫くは…寂しかったり辛かったりするかも知れませんが…慣れっこです」
『っ！』
しのぶはその言葉を聞いた瞬間、そっとAを抱き寄せた。
『どんな事があっても、私はAさんの味方です。』
「っ！？しのぶさん…ありがとうございます……」
そう言うとAは、そっとしのぶの肩におでこを寄せた。
《早くこの二人の誤解が解ければ良いんですが…》
しのぶは杏寿郎と可愛い妹の様なAとの恋路が実ることを祈らずには居られなかった。

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