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客席に散っていたA組も戻りつつあり、このままでは取り囲まれてリンチになってしまう。
1人で戦況を決定づけるリーダー。浅野君が指揮をとる限りA組は負けない。
磯貝君はそういうリーダーにはなれない。磯貝君は1人で決めなくてもいいのだから。
磯貝君の背中を台にE組はさらに増援。その増援は守備部隊だから、E組は誰が棒を守ってるんだと思って見てみたら、竹林君と寺坂君が独特な守備で抑えていた。
「梃子の原理さ」
「て…梃子なのか」
「梃子なら…そうなのか?」
梃子って言っておけば案外誰でも納得できてしまう。
竹林君がアメリカ人に何か言ってたけど、アメリカ人は「このメガネ腹立つ!!」と腹を立てていた。←そこだけ読み取れた。
「あ…慌てるな!!支えながら1人ずつ引きはがせ!!」
A組も着々と集まってきて防御体制が整ってきたその時だった。
「今だ!!来い、イトナ!!」
イトナ君が磯貝君めがけて走り出して、磯貝君は構えていた。
「ヌルフフフ、秘密兵器は最後まで取っておくものですね」
磯貝君の構えた手に足をかけたイトナ君は、ハイジャンプで浅野君より高い位置に棒に捕まり、A組の棒は地面に倒れた。
『勝った…』
A組との勝負。棒倒しはE組の勝利で幕を閉じた。
E組がまたもA組に勝ち、他のクラスからの歓声もあった。
▽ ▽ ▽
体育祭の後は片付けが待っていた。
『よいしょっと…』
「それ持つよ」
観客席の椅子を片付けていたら磯貝君がやって来て私が持っていた椅子を片方持ってくれた。
『いいのに。棒倒し終わって疲れたでしょ?』
「疲れはしたけどさ、俺もちゃんと働かないとな」
そう隣に並んで椅子を運ぶ私達はいつも2人でいる時みたいにまた他愛のない話をする。
「ありがとうな」
『え?』
「棒倒しの前、すごく不安だったからさ。重森の言葉ですごい自信持てたんだ」
『そんな…大した事言ってないよ』
「俺にとっては大した事なんだ。ハチマキもさ、縛ってくれてありがとう」
『っ……』
今思い返せば。あれは自分でも結構大胆なことをしてしまったのでは無いかと急に恥ずかしくなってきた。
『でも…』
「磯貝先輩〜!!」
下級生の子だろうか。女子生徒が磯貝君に話したいことがあるそうで、私は黙って椅子の片付けを進める。
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作者名:野乃梅 | 作成日時:2023年7月30日 0時