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磯貝君に味方していたマダムは、五英傑の中でも美形な方である榊原君に口止めされていた。
私達は外に出て五英傑と磯貝君の話に耳を傾けた。
「…浅野、この事は黙っててくれないかな。今月いっぱいで必要な金は稼げるからさ」
「…そうだな。僕も出来ればチャンスをあげたい」
口ではそう言うけど、浅野君はよからぬ事を企んでいるような顔をしていて、そういうところは理事長先生にそっくりだ。親子だし顔も似てはいるけれども…
「ではひとつ条件を出そう。闘志を示せたら…今回の事は見なかった事にしよう」
「…闘志?」
「
違反行為を帳消しにするほどの尊敬を得られる闘志。それを示すには…
▽ ▽ ▽
「体育祭の棒倒しィ?」
「そう。A組に勝ったら目を瞑ってくれンだとよ」
次の日の放課後の教室には男子達だけで集まっていて、私は磯貝君の様子が気になって戻ってきていた。
今日一日磯貝君はいつも通りの振る舞いで過ごしていたけど、どこか無理をしているように感じた。
廊下に座って教室に耳を傾ける。
「…でもさ、俺等もともとハブられてるから…棒倒しには参加しない予定じゃんか」
「第一、A組男子は28人、E組男子は15人。とても公平な闘いには思えないけどね」
E組がA組に挑戦状を叩きつけた事にすればいい。それもまた勇気ある行動として称賛されると良さげに聞こえる言葉を並べて、昨日浅野君は去って行った。
「ケ、
「…どーすんだよ。受けなきゃ磯貝はまたペナルティだ。もう既にE組には落ちてるし、下手すれば退学処分もあるんじゃね?」
『(退学…)』
退学という言葉を聞いて、思わず体操座りしていた体を縮こませた。
磯貝君がもし退学しちゃったら、きっと教室もいつもより活気がなくなってしまう。
それに…
『(ずっと…)』
「いや…やる必要は無いよ皆」
磯貝君の声が聞こえてきて私は再び教室の話に耳を傾けた。
「俺が播いた種だから、責任は全て俺が持つ。
浅野君の事だから何されるかわかったものではない。それはそうだけど…
『イケ…』
「イケてねーわ全然!!」
「ええ!?」
「なに自分に酔ってんだアホ毛貧乏!!」
「あ、アホ毛貧乏!?」
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作者名:野乃梅 | 作成日時:2023年7月30日 0時