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すると、すごいスピードでターンしようとしたのか、イトナ君はそこらへんの茂みの中に頭を突っ込む形で飛ばされていた。
そしてまた寺坂君達は言い合いになっていた。
「………何にも計画ないみたいだね」
「…うん。ただ遊んでるだけな気が」
「ま、あいつら基本バカだから仕方ないよ」
「あ、でも狭間さんなら頭も良いから…」
そんな狭間さんは分厚い本を地面に置いて何かイトナ君に吹き込んでいたけどそれでまた言い合いに発展していた。
その時だった。
「俺は適当にやってるおまえらと違う。今すぐあいつを殺して勝利を」
触手の発作が始まって松村君達が距離を取る中、寺坂君だけはその場を動かなかった。
「おうイトナ。俺も考えてたよ。あんなタコ今日にでも殺してーってな。でもな、テメーにゃ今すぐ奴を殺すなんて無理なんだよ。無理のあるビジョンなんざ捨てちまいな。楽になるぜ」
「うるさい」
寺坂君に向けて触手を振るうイトナ君だったけど、寺坂君は前と同じようにその触手を受け止めていた。
「2回目だし、弱ってるから捕まえやすいわ。吐きそーな位クソ痛てーけどな。
吐きそーといや松村ん家のラーメン思い出した」
「あん!?」
松村君は殺せんせーから経営の勉強を奨められている。今は美味しくないラーメンでも、いつか店を継ぐ時があったら新しい味と経営手腕で繁盛させるって。吉田君もいつか役に立つかもしれないからと同じ事を言われたそう。
「一度や二度負けた位でグレてんじゃねぇ。
タコ殺すにしたってな、今殺れなくていい。100回失敗したっていい。3月までにたった1回殺せりゃ…そんだけで俺等の勝ちよ。親の工場なんざそんとき賞金で買い戻しゃ済むだろーが。そしたら親も戻ってくらァ」
「…耐えられない。次の勝利のビジョンが出来るまで…俺は何をしてすごせばいい」
「はァ?今日みてーにバカやって過ごすんだよ。そのために
寺坂君の言葉を聞いて、執着が消えたようにイトナ君の顔は少し穏やかになった。
そして殺せんせーも寺坂君とイトナ君が立っている場所に向かって行った。
「今なら君を苦しめる触手細胞を取り払えます。大きな力をひとつ失う代わり…多くの仲間を君は得ます。殺しに来てくれますね?明日から」
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作者名:野乃梅 | 作成日時:2023年7月30日 0時