おかあさんではありません！2【浦.島.坂.田.船】

背水の陣 ページ41

「ねぇ、本当にちょっと待って！」
「もう、ここまで来たんだから諦めなさい」

タクシーから降りてもなかなか動こうとしない私を母はぐいぐいと引っ張る。
どこにこんな力があるんだ。

「いきなりすぎてしょ？心の準備とか...」
「だってお見合いってったらあんた逃げるじゃない」

そう、こういうことは今まで何回かあった。
田舎にはよくある話で、結婚は早い方がいいとかどこどこの誰々ちゃんは子供を産んだ、私も孫が見たいと実家に帰る度に言われていた。
けれど私は結婚なんて全然頭になくて、業を煮やした母がよくお見合い話を持ちかけてくるのだ。
その度にのらりくらりと躱してしたのだが、今回ばかりは母の方が1枚上手のようだった。

「...あんな事があって外にも出られなくなって、あぁAが一生このままだったら...トラウマになってしまったらって心配だったの。だからこうしてちゃんと人付き合いができてお仕事しているのが本当に嬉しいの」
「.......お母さん」
「そう、だからあとは結婚して欲しいの！お母さん早く孫の顔が見たい！」
「それが本音でしょ！？」

「まだ25だし！」「お母さんはもうその時あんたを産んでたわ」「知らんわ！」などと口喧嘩をしているうちに、いつの間にかホテルのロビーに連れてこられていた。

「お、お父さん！お父さんが許さないでしょ？可愛い一人娘が嫁に行くかもしれないんだよ？」
「Aが幸せになるならそれでいいって」



(理解ありすぎだろ！)

ん？→←油断した！

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